PSV残留の堂安律が今季初出場で決めた戦慄のスーパーゴールに込めた思いとは…「ようやくチームの役に立てた」
エールディヴィジからヨーロッパ5大リーグのひとつ、ブンデスリーガ1部への移籍はステップアップとなる。対照的に名門PSVから昇格組のビーレフェルトへの移籍は、決してそうは映らない状況を誰よりも堂安自身が理解していた。 「チームの格はもちろんPSVの方が上だと僕もわかっている。周囲にとってはPSVで活躍した方がさらにビッグクラブへ移れるとか、あるいは成長するための近道に見えるかもしれない。ただ、少し遠回りに映るかもしれないけど、僕にとってはさらに強くなるために、上手くなるための一番の近道だと感じて決断しました」 果たして、昨シーズンの堂安はブンデスリーガで全34試合に出場。先発は実に33回を数え、チームトップタイの5ゴールをあげて残留に貢献した。充実感を漂わせる堂安の言葉を聞けば、期限付き移籍が正解だったと伝わってくる。 「変化を恐れることなく、いろいろな部分で成長を遂げたいという気持ちを忘れずにプレーできたなかで蘇った感覚がある。プラスアルファとして、ヨーロッパの5大リーグのひとつで、そういう気持ちを表現できたのは成長なのかなと」 メンタルがプレーに好影響を与え、たくましく変貌を遂げた証は東京五輪へ臨むU-24日本代表で、初めて託された「10番」に反映されていた。迎える今シーズンも右肩上がりの曲線を持続させたい。引き続き移籍を希望した理由がここにある。 しかし、買い取りオプションの行使を目指していたビーレフェルトは、PSVが設定した500万ユーロ(約6億5000万円)の違約金を前に断念。新型コロナウイルス禍で生じた大幅な減収は、今夏の移籍期間中に関心を示した3つのクラブも撤退させた。 だからといって、モチベーションを低下させるわけにはいかない。モードをアジア最終予選に切り替えていた日本代表への招集中に、堂安はこんな言葉を残していた。 「シンプルに答えれば、決まったところで自分の力を発揮するのが選手として、プロとして一番やらなければいけないこと。自分の役割はチームを勝たせる数字を出すこと。それがアタッカーとして、一番評価されることだと思っている」 決勝トーナメント以降の3試合で無得点だった東京五輪。途中出場で攻撃を活性化させられないまま敗れた、オマーン代表とのアジア最終予選初戦。そして、リザーブのままで終えた中国代表との同第2戦をへて、数字へのこだわりはさらに強くなった。 迎えたAZ戦。後半10分から敵地のピッチへ送り出され、今シーズンの公式戦で待望の初出場を果たした堂安の決意は、同38分のスーパーゴールとなって結実した。