なぜプロ野球のシーズン中に“トレードラッシュ”が起きているのか?
“トレードラッシュ”と言っていい。交流戦明けに5件ものトレードが成立した。6月26日に発表された巨人の吉川光夫、宇佐見真吾と、日ハムの鍵谷陽平、藤岡貴裕の2対2トレードを皮切りに、中日の松井雅人、松井佑介、モヤと、オリックスの松葉貴大、武田健吾の金銭を交えた変則の3対2トレード、楽天と広島の間でも、三好匠と下水流昂とのトレードが成立、4日には阪神とロッテの間で石崎剛と高野圭佑の“ブルペントレード”が決まり、7日には巨人の和田恋と楽天の古川侑利の交換トレードが発表された。 実は、これは今年だけの異常現象ではなく、ここ3年、交流戦明けから期限の7月末までに行われる“駆け込みトレード”の件数に増加の傾向がある。 昨年も7月9日に決まったオリックスの伊藤光、赤間謙と横浜DeNAの白崎浩之、高城俊人の2対2のトレードを第1弾に、中日の小川龍也が西武に金銭で移籍、広島とソフトバンクの間で美間優槻と曽根海成のトレードが行われ、阪神の松田遼馬もソフトバンクの飯田優也と交換。第5弾として、期限ギリギリの26日にロッテの藤岡貴裕と日ハムの岡大海というレギュラー級のトレードもあった。その前年の2017年も、交流戦明けに日ハム屋宜照悟とヤクルト杉浦稔大のトレードなど5件がシーズン中に行われている。なぜ“駆け込みトレード”が増える傾向が生まれているのだろうか? 現役時代に阪神、ダイエー(現ソフトバンク)などでプレーした評論家の池田親興さんは、「ひとつはフロントが真剣に企業努力を続けているという証。ペナントレースも半分の折り返しです。後半の戦いで優勝、或いはCS出場を本気で考えていくと、当然、補強ポイントが浮き彫りになってきます。それともう一つは育成契約の選手も増えました。自前で選手を育成しようという風潮が強くなる中で“あふれた選手”も増えてきた事情もあると思います」という分析をしている。 プロ野球は、ここ数年、本格的なSNS時代に突入した。中日の応援歌を巡る「お前問題」が、想定外の炎上騒動となったが、ファンがSNS上で情報交換を盛んに行うようになって球団が、その声を無視できない状況になっている。プロ野球が置かれた環境の変化もシーズン中のトレードを各球団に積極的に検討させる背景のひとつにはある。また、どの球団も観客動員が右肩上がりで球団経営が好転しているという状況とも無縁ではないだろう。