なぜプロ野球のシーズン中に“トレードラッシュ”が起きているのか?
今回のトレード事情を探ってみると、オリックスー中日の話は、オリックスから動いた。オリックスは新外国人のメネセスをドーピング違反でリリース、捕手の伏見寅威がアキレス腱断裂で今季絶望となり、大砲タイプの外国人と捕手の補強が急務だった。そこで中日のモヤと松井雅に目をつけた。中日も慢性的な投手力不足にあり、先発、中継ぎの両方で使える左腕の松葉、そして化ける可能性のある外野手の武田のセットで打診に応じた。巨人と日ハムのトレードも、ブルペンの補強が最大テーマの巨人と、勝負強い打者、先発候補を探す日ハムの思惑が一致したもの。 ロッテと阪神のトレードは「ブルペン強化」をテーマに掲げるロッテ側が仕掛け、阪神は、昨年、西武に榎田大樹を送り出したケースと同じく、チームでは出番のない石崎に環境を変えチャンスを与えてあげたいという“親心”が加味されたトレードだったと見られる。 理想を言えば、交換要員は同じく中継ぎの高野ではなくチームの課題は打線強化なのだから野手で話をつけるべきだったのだろう。 元千葉ロッテの評論家の里崎智也氏は“トレードラッシュ”の理由を「そもそも巨人と日ハムは過去に多くのトレードを成立させるなど関係が良好で、楽天、オリックス、ロッテに関しては、いずれも新しいGMが就任しています。編成の新しい責任者の積極的に何かを仕掛けたいという意欲の表れかもしれません」と見ている。 楽天は2年前に石井一久氏、オリックスは前監督の福良淳一氏が今季GMに就任。ロッテも松本尚樹氏が昨年から球団本部長に就任している。 表を見てもらえば、トレードに積極的な球団と消極的な球団に分かれているのがわかるだろう。ここ10年のトレードによる獲得選手数は、オリックスがダントツで35人、日ハムの27人、巨人の22人、横浜DeNAの20人、楽天の20人と続く。オリックスは、この10年、森脇浩司監督時代の2014年の2位を除き、すべてBクラス。低迷しているチーム成績とトレードの件数の多さは無縁ではない。常に戦力の強化に追われている。 加えて、ここ10年の間にFAで寺原隼人、日高剛、糸井嘉男、平野佳寿、西勇輝ら主力を失い戦力バランスが崩れ、どうしても、その穴を埋めるためにトレードに頼らざるをえないという苦しい台所事情もある。