なぜNBAラプターズの渡邊雄太は無保証の最低年俸契約から念願の本契約を勝ち取ることができたのか
渡邊の契約は来季も含まれるが、来季の契約は保証されていない。スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」でラプターズを担当しているブレイク・マーフィー記者によると、今オフ、フリーエージェントとの契約解禁(8月6日午後12時1分)から3日たてば37万5000ドル(約4050万円)が保証され、来季の開幕ロスターに残れば全額が保証される。 渡邊が20日の会見で「肩の荷が下りたとかはないです。正直、全然油断はできない」と言った通り、保証がないゆえいつ切られるかわからないという危機感はある。 ただラプターズが現時点で渡邊を来季のロスター候補として考えており、今後も自らの監視下で育てたいこと、このオフ、渡邊をフリーエージェントにして他のチームに取られたくないという思いがあることは、契約が来季までということからもわかる。 渡邊は今季序盤、NBAの名だたる選手を相手に得意の守備力を発揮。ファイト溢れるプレーでチームを盛り上げ、ローテーション入りを果たすなど、瞬く間にラプターズの“嬉しいサプライズ”となった。 ところが2月に左足首を捻挫。復帰後はなかなか調子が取り戻せず、チーム事情もあって出場機会が減った。 渡邊がプレー機会を増やすためのカギは明白だった。自信を持ってスリーポイントを打ち続けることと、ゴール下にドライブしてパスをさばくばかりでなく自分で決め切ることだった。それを伸ばすためにナースHCは、渡邊にいつでも打っていいという「青信号」を出した。「打ち続けて自信を得て欲しい」。それが、同HCの望みだった。 そして4月2日のウォリアーズ戦、渡邊は果敢にゴール下に攻め、本人が「たぶんNBAで今までやったことがなかった」というアンドワンを奪った。「試合に出られなかった期間、継続して練習していた部分。ああいう成功例が出ると自分の中でも自信に繋がります」と渡邊。この試合を機に上昇気流に乗った。8日のブルズ戦でスリーポイント1本を含む3本のフィールドゴールをすべて成功させると、次戦の対キャバリアーズでも2本のスリーポイントを両方決め、フィールドゴール7本中6本を成功させて自己最多の14得点。さらに16日のマジック戦では21得点とまたも自己最多を更新。主力が故障でこぞって抜けた試合でチームを勝利に導き、ナースHCは「雄太は相手チームの脅威になってきている」と笑みをこぼした。 「(契約のことに関しては)私ではなくフロントの判断だ。でもこれだけは言える」 そう前置きしたあとナースHCは、ラプターズのフロントが以前から渡邊との本契約を検討していたことを明かし、渡邊自身も本契約に変わるという話は実際にサインを交わした時よりも「もっと前から出ていました」と言った。 そんな中、4月は18日までの10試合で1試合平均19.8分出場し8.7得点、4.2リバウンド。フィールドゴール成功率60%(33/55)、スリーポイント成功率45.8%(11/24)と高確率を残して、堂々と契約書にサインを書き込んだ。