なぜセレッソ大阪は38歳の大久保嘉人を獲得したのか?
大久保が胸中に抱いていた思いは理解できる。ならば、磐田でプレーした2018シーズンも1得点に終わっている、今年6月には39歳になるベテランへ、なぜセレッソはオファーを出したのか。 セレッソは育成クラブ路線へ舵を切るとして、堅守をベースに2019シーズンのJ1リーグで5位に、昨シーズンは4位に導いたミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(現清水エスパルス監督)との契約更新を見送っている。母国ブラジルで半ば引退状態にあった、67歳のレヴィー・クルピ監督を8年ぶりに復帰させた理由を、梶野智チーム統括部長は昨年末の段階でこう説明していた。 「セレッソ大阪というクラブは(J1への)残留を目的とするのではなく、常にトップ3に入らなければいけない。その上で若い選手、未来の選手を育てることにチャレンジする。他のチームから獲得する選手に関しても、できるだけ年齢的に若い方がクラブの将来的にもいいと考えている」 育成路線と矛盾するように映るベテランの大久保を獲得した理由を紐解いていくには、数年前から推し進められてきた独自の戦略を把握しておく必要がある。前社長の玉田稔氏が「ウチから海外へ移籍することも重要ですけど、何らかのタイミングでウチに戻ってくるケースも作りたかった」と語ったUターン補強は、いま現在の森島寛晃社長体制でも引き継がれている。梶野統括部長はこう語る。 「セレッソから海外へ行って活躍した選手が、最後はセレッソで活躍して、セレッソの選手として引退するのが一番望んでいる形です」 2016シーズンにバーゼルからFW柿谷曜一朗、2017シーズンにはセビージャから清武弘嗣とセレッソ出身の日本代表経験者が復帰。いま現在も背番号の『7』と『23』を空けているのは、それぞれに深い愛着をもつエイバルのMF乾貴士、所属クラブなしのMF香川真司を待っている証でもある。 さらに復帰してくる選手たちにはセレッソをけん引していくだけでなく、頼れる背中や立ち居振る舞いを介して若い選手たちへ経験を伝えてほしいと、梶野統括部長は新たな役割も託していた。 「非常に経験が豊富で、レベルの高い選手たちがそろっている間に、若い選手が1人でも2人でも出てくるようなチーム編成をしたい」 昨シーズンは万全なコンディションを取り戻した31歳の清武が、キャリアハイとなる8ゴールをあげて攻撃陣を力強くけん引した。対照的に契約延長を提示されていた31歳の柿谷が、オフになって出場機会を求めて2年連続でオファーを受けた名古屋グランパスへ完全移籍。昨夏にオファーを出した香川からも、ヨーロッパでの挑戦を継続させたいという理由で断りを入れられた。