なぜセレッソ大阪は38歳の大久保嘉人を獲得したのか?
そうした状況下でヴェルディを退団し、現役続行を希望している大久保の存在が目に留まったのだろう。2度の海外挑戦では思うような活躍ができなかった大久保だが、歴代1位となるJ1通算185ゴールをあげた実績は、84ゴールをあげた川崎時代を含めていまもまばゆい輝きを放つ。新たに3年契約を結んだ清武とともに、指南役も担ってほしいというフロントの期待が伝わってくる。 川崎で15ゴールをあげた2016シーズンを最後に、大久保は2桁得点をマークしていない。ただ、2列目としてパスの配球役を託された試合も少なくなかった。清武、昨シーズンにブレークした坂元達裕と2列目にパサーがそろうセレッソには、さらにリオデジャネイロ五輪代表のMF原川力もサガン鳥栖から加入。大久保にとっては、最前線で本来の点取り屋の仕事に専念できる状況も整う。 さらに「敗戦」の二文字を心の底から嫌う負けず嫌いの性格と、味方に対して忌憚なくパスなどを要求できる厳しさもまた、若手を含めたチーム全体に好影響をもたらすと判断されたはずだ。そして、直近の2シーズンの結果は批判されて当然だと受け止めている大久保は、自身のインスタグラムへの投稿のなかで、セレッソのファン・サポーターへ向けて決意を新たにしている。 「この歳になり、いろいろと言われる事もありますが、それを力に変えて皆さんを喜ばせるのも自分次第だし、結果で示さないといけないと思っています」(原文ママ) セレッソのFW陣はこのオフに陣容が大きく変わった。チーム最多の9ゴールをあげたブルーノ・メンデスや、ベテランの都倉賢(現V・ファーレン長崎)らが退団。2019シーズンの韓国Kリーグ得点王、オーストラリア代表のアダム・タガートが水原三星から移籍し、中盤の選手登録ながら前線で7ゴールをあげた奧埜博亮、昨シーズン終盤に活躍した豊川雄太らの争いに大久保が加わる。 2年ぶりに挑むJ1リーグの舞台では、前人未踏のJ1通算200ゴールへの期待もかかる。しかし、大久保が何よりも望むのはチームの勝利であり、次に勝利に繋がる自身のゴールとなる。プレーオフから挑むACLも加わる新たなる戦いへ。インスタグラムの投稿に「自分を信じて」と覚悟を綴った大久保は、おそらくはプロ人生で最後となる新天地への合流をいまから心待ちにしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)