多くの大人が「懐かしい!」と思う、“長年の課題”を攻略へ…。あのヨーグレットが気づけば「グミ化」一体なぜ
そこで「もちっと」をとことん追い求め、製造できるギリギリ、「これ以上やわらかくしたら製品規制上、問題が起きかねない」という地点まで、数十回試作を繰り返したという。 筆者も味わってみたが、ぷよんとやわらかで、しっかり噛まないと切れない歯応え。たしかに「もちっと」を連想した。ほかの消費者の反応が気になるところだが、取材時はまだ発売から1カ月。このもちっと感が正解だったのかは、これから市場が判断するところだろう。
■グミの特性に合わせ、初の味展開も 一方で、グミの味にもこだわった。目指したのはタブレットに近い、適度な酸味のある風味の再現だ。それに加えてヨーグレットについては、バリエーションも用意した。 「グミの市場は非常に多様性があり、そこから選ぶ楽しさが最大の魅力です。だから、数多くの味展開をしているブランドのほうが、棚で存在感を発揮しやすいと判断しました」と山下社長は説明する。 新たな味として生まれたのは、ヨーグルトとフルーツを組み合わせる「フルーツヨーグルト」をイメージした「fruit(フリュイ)」シリーズ。「いちごヨーグルト味」と「洋梨ヨーグルト味」だ。ヨーグレットでフルーツ味の展開をしたことはこれまでなく、ブランド初の挑戦となる。
こちらも食べてみたところ、いちごはジャムのような甘酸っぱさが際立ち、洋梨は、フルーティな甘みとヨーグルト風味がまろやかにマッチしている。そして、どちらも果実の香りの存在感が大きい。グミならではの新しいおいしさを実現していた。 こうして、満を持して発売となったヨーグレットグミ。幸いにも、スーパーや小売店は、「棚での存在感を発揮したい」という意図を理解し、3種類すべてを採用してくれるところも少なくないそうだ。
複数展開の手応えを感じているものの、まだ発売から1カ月で、予断を許さない状況だ。 「マーケティング分析によると、グミは、同じブランド内で違う味を回遊したり、複数種類をまとめ買いする消費者が多いことがわかっています。これから伸びるのではないでしょうか」と、高宮さんは明るい予想をしている。 最後に、ハイレモンのグミについては、レモン特有の酸味がきちんと感じられるように商品設計され、無事に発売された。しかし、諸般の事情で現在休売になっているそうだ。消費者の声があれば復活を考えたいとのことで、今後の動向に注目したい。
■後編では「明治→丸紅」M&Aの裏側をお届け 続く後編では、丸紅によるM&Aからはじまった、激動の1年に迫る。創業から79年の歴史で育んだ製造技術を守りながら、販路開拓から新製品開発まで、すべてを再構築しなければならなくなった250人の社員たち。彼らは、どのようにして新たな挑戦に立ち向かっているのか。老舗製菓会社の変革の現場から、その軌跡を追う。 続きを読む:ヨーグレットの製菓会社「明治から独立」での変化 丸紅グループにとって菓子製造進出の第1号案件
笹間 聖子 :フリーライター・編集者