「オワコン集まれ!」VAIO買収に動いたノジマの異次元すぎる事情
家電量販店のノジマがパソコンメーカーのVAIOを買収すると発表しました。ソニーのパソコン事業として始まったVAIOはスマホや動画配信の台頭、ソニーショックを経て“オワコン”的な存在です。なぜ今、ノジマは買収を決めたのでしょうか?(百年コンサルティング代表 鈴木貴博) ● 時代の最先端だったVAIO 今やオワコンに… 家電量販店のノジマがパソコンメーカーのVAIOを買収すると発表しました。2025年1月に発行済み株式の93%を取得して子会社化します。ソニーグループは5%を保有する第二位の株主になる予定です。 VAIOという名前を聞くと胸が躍る人は今でも少なくありません。1996年にソニーのパソコン事業として始まったVAIOは、発売当初から時代の先端を行っていました。 製品としてデビューした当時のウリはデザイン性です。マグネシウム合金のボディで、本体、ディスプレイ、キーボードすべてがパープルの色に統一されたVAIOは、無機質なパソコンばかりだった時代に圧倒的に目立つ存在でした。 そもそもパソコンをデザインで魅了するというアイデアはiMacよりも2年早かったという点でも、VAIOは特筆すべき存在でした。 ノートパソコンとカメラが融合するという今では当たり前のスペックもVAIOのC1から始まっています。これはもともと試作機でした。それを幕張のとあるイベントの基調講演で、後にソニーの社長になるパソコン事業トップの安藤国威さんが「VAIOの未来はこれです」と見せたことで大騒ぎになり、急遽、新発売されることになりました。 テレビ番組を録画してDVDに残すライフスタイルもVAIOから始まっています。1999年当時、パソコンにアンテナ入力端子が付いたVAIOが発売され、後に市販されるDVDレコーダーの先駆けとなりました。
● 黒物家電の大量絶滅で ノジマも成長の曲がり角に直面 21世紀初頭、デジタル時代の新しいワクワクはVAIOから始まっていたのですが、やがてカメラは携帯やスマホと融合し、デジタル放送はブルーレイレコーダーで残す時代を経て動画配信でいつでも見られる時代へと変化します。 パソコンは結局パソコン単体の存在に戻り、やがて価格競争に巻き込まれ、ソニーショックを経てVAIOはソニーグループの中では“オワコン”となります。 そしてVAIO事業は企業再生ファンドの日本産業パートナーズに売却され、法人向け需要にフォーカスする形で事業再建が続けられてきました。それを今回、ノジマが買収することになったのです。 さてノジマの祖業でもある家電量販店業界自体が成長の曲がり角に来ています。洗濯機、エアコン、冷蔵庫といった白物家電は高級化・高性能化と買い替え需要で、なくなりはしません。しかし、いわゆる黒物家電はオワコンになるのではないかと危惧されています。 黒物家電とはかつてのジャンルで言えばテレビ、ビデオレコーダー、ステレオやラジカセ、ウォークマンのようなポータブルオーディオ、そしてデジカメやハンディカムのようなビデオ録画機器といった商品のジャンルです。 このオーディオビジュアルを中心とした黒物家電の業界では、この20年で大量絶滅が起きています。 平成初期の自宅にはどの家庭にもステレオ機器が置かれていました。まずこのポータブルステレオが消滅します。ラジカセやウォークマンも同様で、すべてスマホと小型のスピーカーやイヤホンに置き換わります。デジカメやビデオカメラも家電量販店の人気商品でしたが、今ではどちらもスマホに代替されるようになりました。 テレビは大画面化が進み安泰ですが、録画はテレビに直接ハードディスクを接続すればそれでOKなのでレコーダーは購入する必要がなくなりました。動画配信もテレビ本体からできますから機器は必要ありません。 結局、黒物家電ではテレビとスピーカーだけが必要で、あとはUSBケーブルでつながるパソコン用のHDDとスマホ関連グッズだけが売り場で生き残るような状況です。