「イールドカーブ・コントロールの運用を一部見直し」日銀・黒田総裁会見12月20日(全文1)
5%程度の賃上げ実現の場合、出口に向けた議論は可能になるか
記者:2点目は賃上げについてです。来年の春闘で連合が求めるベア3%程度、もしくは定期昇給分を含めて5%程度の賃上げが実現した場合、日本銀行として出口に向けた議論が来年以降に可能になるとお考えになりますか。よろしくお願いします。 黒田:先行き、賃金は経済活動や労働需給が改善していく下で、物価上昇率の高まりも勘案することを映じて、上昇率を高めていくものと考えております。日本銀行は企業収益や雇用、賃金が増加する中で、物価も緩やかに上昇するという好循環を目指しております。その意味で、ベアを含めた賃金の動向は重要でありますけれども、物価安定の目標は持続的・安定的に実現できるかどうかは、こうした単一の指標だけでなく、経済・物価情勢をその背後にあるメカニズムや先行きの見通しも含めて点検の上、判断していくことになると思います。そうした結果、物価安定の目標の実現が近づいてくれば、出口に向けた戦略や方針について金融政策決定会合で議論し、適切に情報発信していくことになるというふうに言えます。 記者:ありがとうございました。それでは各社さん、お願いします。
事実上の利上げに当たらないのか
記者:日本経済新聞の小野沢と申します。お話のありましたYCCの運用見直しについてお尋ねいたします。総裁は9月に大阪で開いた経済団体との懇談会あとの記者会見で、YCCの変動許容幅の拡大は金利の引き上げに当たるとのご認識を示されていました。ほかの日銀幹部の方も過去に許容幅の拡大は事実上の利上げになり、日本経済にとって好ましくないとのご発言をされています。先ほどのお話では市場機能の改善に向けた措置とのことですが、今回の許容幅拡大は事実上の利上げには当たらないのでしょうか。また、今回の措置はYCCの撤廃といった将来の出口戦略について何か影響はするのでしょうか。お考えを伺えますでしょうか。 黒田:まず今回の措置は市場機能を改善することでイールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が企業金融などを通じてより円滑に波及していくようにする趣旨で行うものでありまして、利上げではありません。今回の措置により国債金利の変動幅が広がるものの、企業金融などを通じてイールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果がより円滑に波及していくというふうに考えております。日本銀行としては、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることで物価安定の目標の実現を目指していく考えであります。 また、このイールドカーブ・コントロールの運用の一部の見直し、これはイールドカーブ・コントロールをやめるとか、あるいは出口というようなものでは、まったくありません。公表文でも示しておりますように、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が企業金融などを通じてより円滑に波及していくようにする趣旨で行うものであって、出口政策とか出口戦略の一歩とか、そういうものではまったくありません。 経済・物価情勢を踏まえますと、これも最初に申し上げたとおり、現在は経済をしっかりと支えて、賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的・安定的に実現するために金融緩和を継続することが適当であるというのが政策委員会の一致した考えであります。