「イールドカーブ・コントロールの運用を一部見直し」日銀・黒田総裁会見12月20日(全文1)
わが国経済を巡る不確実性は極めて高い
リスク要因を見ますと、引き続き海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性は極めて高いと考えています。その下で、金融・為替市場の動向や、そのわが国経済・物価への影響を十分注視する必要があります。 日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。 その上で、当面、感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と、金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については、現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しています。以上です。
大規模緩和の効果と副作用は
記者:ありがとうございました。幹事社からの質問は2問です。まず1点目ですが、日本銀行と政府が2%の物価上昇目標を盛り込んだ共同声明を2013年1月に連名で発表し、黒田総裁が大規模な金融緩和策を始めてから来年で10年を迎えます。大規模緩和の効果と副作用について、総裁のご認識をあらためて教えてください。また、日本銀行として2%目標や政策運営に関する点検、あるいは検証を実施するお考えがあるかどうかもお願いします。 黒田:2013年以降の大規模な金融緩和は、実質金利の押し下げを起点にして、貸出金利などの資金調達コストの低下や、株式市場等の金融資本市場の改善を通じて、緩和的な金融環境を実現してきております。この結果、失業率の低下など雇用情勢は改善し、デフレでない状況となりました。昨年3月の点検でも確認したとおり、大規模な金融緩和が行われなかった場合と比べますと、この間の実質GDPは平均プラス0.9から1.3%程度、消費者物価の前年比は、同じくプラス0.6%から0.7%程度押し上げられていたとの試算結果を得ております。 一方、長期にわたる金融緩和の副作用としては、主に金融機関収益を圧迫し、金融仲介機能に悪影響を与える可能性や市場機能の低下が挙げられます。この点、現在わが国では、金融機関は充実した資本基盤を備えており、金融仲介機能は円滑に発揮されていると判断しております。また、市場機能に配慮する観点からは、これまでさまざまな措置を講じてきていることに加え、本日、長短金利操作の運用を一部見直すこととしたところであります。日本銀行としては政策の効果が明らかに副作用を上回っていると考えております。 次に2%の物価安定の目標や政策運営の枠組みに関する点検、検証についてのご質問でありますけれども、日本銀行はイールドカーブ・コントロールの下で賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実践することを目指しております。現状ではその実現までになお時間を要する見通しであり、金融政策の枠組みや出口戦略等について具体的に論じるのは時期尚早であると考えます。物価安定の目標の実現が近づいてくれば、出口に向けた戦略や方針などについて金融政策決定会合で議論し、適切に情報発信していくことになるというふうに考えております。