「イールドカーブ・コントロールの運用を一部見直し」日銀・黒田総裁会見12月20日(全文1)
なぜ、このタイミングで変動幅拡大を決めたのか
記者:時事通信の井町と申します。よろしくお願いします。長期金利の変動幅拡大について、2点お願いします。1点目は、今回の公表文にも書いてあるとおり、春先以降の海外市場のボラが高まってという説明がございますけれども、国際市場のこういった機能低下、以前から生じていたんだと思いますけれども、なぜ今回、このタイミングで変動幅の拡大を決められたのかという、タイミングについてお聞かせください。 2点目は、海外市場のボラが高まって、機能低下が再び起きた場合に、市場機能改善に向けて、変動幅っていうのはどこまで拡大が可能だとお考えでしょうか。以前、去年の点検では、50bpsを超える変動幅が生じた場合、設備投資への影響といったことが指摘されていたと思いますけれども、この点についてもお考えをお聞かせください。 黒田:この点は、春先から、特にロシアのウクライナ侵攻が始まって以降、非常に資源価格の高騰であるとか、各国のインフレの高進であるとかそういう中で、金融政策が大きく転換していったということなど、さまざまな要因から、春先からボラティリティが高まっていたことは事実なんですけれども、それは一時的に収まったように見えたものの、最近また、再びそれが強くなってきて、しかも、冒頭も述べましたように、さまざまなイールドカーブ・コントロールの下での指し値オペその他によって、10年物の国債の金利が0.25%に抑えられてきたわけですけども、イールドカーブの形状がややゆがんだ形になって、それが将来、企業金融などにもマイナスの影響を与える恐れがあるということが認識されてきましたので、このタイミングで是正を図り、市場機能の改善を図ったということであります。 将来うんぬんということについては、何か具体的なことは申し上げるつもりはありませんが、全体として、これはある程度希望ですけれども、世界的な金融資本市場のボラティリティも少しずつ低下し、安定していくのではないかというふうに期待をしています。もちろん、ウクライナ戦争の状況もまったく不確実ですし、さらには欧米の金利引き上げによる経済、あるいは金融資本市場の影響というものも不確実なものもありますし、また最近では中国におけるゼロコロナ政策の転換以降、コロナ感染症の動向が非常に分かりにくくなっている、不確実だっていうこともありますので、楽観はできませんけれども、さらなる拡大といったようなことは必要ないし、今のところ考えていないということになります。