異国の店主と土地の味。/イラン料理店『ボルボル』
土井 ブレずに飲食の道一本なんですね。イラン料理はケバブのイメージがありますが、実際はどんな味付けのものが多いんですか? ボルボル 串焼きのケバブは一番よく食べる国民食ですね。でも、トルコなどと比べてトラディショナルな作り方だと思います。スパイスやハーブは使うけど、3~4種類と塩胡椒のみでとてもシンプルだし、料理ごとに使う種類が違うのでいろんな味が楽しめます。主食はご飯とナン両方あって、インドのナンよりも生地が薄くて甘味が控えめなのでペロリと完食できちゃいますよ。
土井 スパイスはしっかり効いているけど、味は濃すぎず、どちらかというとさっぱりしてて食べやすいですね。お酒というよりも、ソフトドリンクが合うかんじ。 ボルボル 実際イランでは、お酒は基本飲まないんですよ。1970年代末にイランで革命が起きたことでイスラーム原理主義の共和国になったので、イスラームの教えに従って法律で飲酒が禁止されてて。その分、ソフトドリンクの種類が豊富だし、お酒がなくても楽しめる家庭的な味付けが多いのかもしれません。
土井 単に宗教で禁止というだけでなく、情勢が絡んでいるのですね。イランでは、家で食事をするのが一般的なんですか? ボルボル そうです。基本はお母さんが毎日作ってくれて、子供たちが野菜を洗ったりお手伝いをするのが当たり前。そうやってみんな、自然と料理のレシピを覚えていくんです。
土井 大人になった時に自立した生活ができるので、小さい頃から料理の仕方を知るのは大事ですね。 ボルボル そもそもイラン人の国民性として、何か困ったり苦しいことがあっても、自分の力でなんとかしようとする逞しさがあります。特にワタシは、ちょうど兵役の時にイラン・イラク戦争にも行って大変な思いをして生き延びたので、もう何が起きても挫けない自信がありますよ。
土井 20年間お店を続けてきたことも、ボルボルさんの力強い生き様を体現していますね。通し営業でランチも食べられるので、また高円寺に来た際は遊びに行きます!
インフォメーション
『ボルボル』 ◯東京都杉並区高円寺北3-2-15 八字ビル2F ☎︎03・3223・3277 11:00~23:00 無休 interview: Hikaru Doi, photo: Kazuharu Igarashi, text: Shoko Yoshida
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