強迫症ってなに? 「手を洗い続ける、何かが心配で確認行動が止まらない」心理の正体
今まで普通にできていたことができなくなってしまう。やればやるほど本当にやれたのか自信がもてなくなり、疲れ果てるまでその行動が止められなくなる強迫症の恐怖。強迫症のつらさから逃れるヒントを精神科医の野間利昌氏が紹介する。 ※本稿は野間利昌監修『強迫症/強迫性障害をワークで治す本』(大和出版)から抜粋したものです。
意識せずにやれていたことでも、なぜかやれた感じがしなくなる
精神疾患で用いられる最新の診断基準「DSM-5-TR」では、強迫症とは、強迫観念または強迫行為のどちらか、または両方が存在する状態で、過剰な強迫観念や行為により時間が浪費され、社会機能や人間関係に支障をきたすとされています。 強迫観念の内容は、人によってさまざまです。不安や恐怖に結びつくことが多いですが、たんに「しっくりこない感覚」ということもあります。今まで意識せずにできていたことが、なぜか「本当にそれで良い」という感覚をもてなくなります。 そして、そのことをそのままにしておくと、どうしようもない不快感が生じるため、その不快感を消すため、あるいはそもそも生じないように避ける行動として強迫行為を行うようになります。強迫行為をすることで、不安や不快が無くなるどころか、やればやるほど本当にやれたのか自信がもてなくなり、疲れ果てるまでその行動が止められなくなります。 そして、もっとわるいことに強迫行為をすればするほど強迫観念は強く大きくなってしまいます。
なぜ不安から強迫観念が生まれるのか?
今まで普通にできていたことが、普通にできなくなってしまうのはどうしてなのでしょうか? ここで考えていただきたいのは、強迫症の人はあらゆることに強迫症状が出ているわけではないということです。 自分が気になることには強迫症状が出ますが、他のことはとくに苦労することなく普通の行動をとることができます。 違う点は「強迫症状が出ていることに関して、不安や不快感をゼロにしようとしている」ということではないでしょうか。 「絶対にこれで大丈夫」と不安をゼロにしようとし始めたときから、強迫観念が生まれてくるといえます。 逆に強迫が生まれないことに関しては、不安をゼロにしようとしてないのです。だから強迫症状にならないということも大事なポイントです。