新たな明るい彗星候補「ATLAS彗星(C/2024 S1)」(A11bP7I)を発見
「彗星」は知名度のある天体ですが、容易に観察できる機会は稀であるため、明るくなると予測される彗星はしばしば話題となります。昨今ではちょうど、2023年に発見された「紫金山・ATLAS彗星(C/2023 A3)」が、2024年10月上旬から中旬にかけて、肉眼でも観察可能な明るさになると予測されており、彗星コミュニティが活気づいています。 アメリカのキットピーク国立天文台で撮影された紫金山・アトラス彗星 そして2024年9月下旬には、彗星コミュニティには別の吉報ももたらされました。2024年9月27日に発見された「ATLAS彗星(C/2024 S1)」が、2024年10月下旬から11月上旬にかけて明るくなるとする予測がされたためです。彗星の明るさ予測はしばしば難しいことで有名ですが、楽観的な予測ではマイナス5等級からマイナス7等級と、金星よりも明るくなる可能性があります。
ATLAS彗星(C/2024 S1)は池谷・関彗星と似ている
夜空に長い尾を引いて現れる天体である「彗星」は、その特異な形状と珍しさから、古今東西注目され続けています。肉眼で観察可能なほど明るくなる彗星はめったにないほど珍しいため、明るくなると予測される彗星はしばしば話題となります。 2024年9月27日、暫定名「A11bP7I」と名付けられた天体が「小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)」によって発見されました。その公転軌道から、発見から1日も経たないうちにインターネットコミュニティGroups.io上に設定された彗星コミュニティでは、A11bP7Iは明るい彗星になるのではないかと注目が集まりました。 同年10月1日付で正式に「ATLAS彗星(C/2024 S1)」と命名されたこの彗星は(※1)、「クロイツ群」と呼ばれるグループに属しています。クロイツ群は太陽に極めて接近する公転軌道を持っており、しばしば歴史に残る大彗星となることで知られています。クロイツ群の代表例は1965年に明るい彗星となった「池谷・関彗星(C/1965 S1)」であり、上弦の月に匹敵するマイナス11等級にもなりました。 ※1…彗星の名前は、それを発見した人物・団体・システムが最大で3人まで自動的に割り当てられます。ATLAS彗星と紫金山・ATLAS彗星は名前が似ていますが、同じシステムで発見されたこと以外は無関係の天体です。また「ATLAS彗星」という名前は82個の彗星(分裂核を数えず)に割り当てられているため、場合によっては仮符号である「C/2024 S1」が優先して呼ばれます。 発見時の明るさからすると、ATLAS彗星は池谷・関彗星ほど明るくはならないと推定されます。ただしそれでも、ATLAS彗星は太陽からたった1200万kmの距離まで最接近するため、楽観的な予測ではマイナス5等級からマイナス7等級になると推定されており、金星よりも明るくなります。これは、最大でマイナス4.8等級であると推定される紫金山・ATLAS彗星よりも明るくなることを意味します。条件が良ければ昼間でも見えるかもしれません。