「菅政権」のコロナ対策――よみがえる田中派の血脈
新型コロナウイルスの感染拡大への対応のまずさもあって、報道機関各社の世論調査では、安倍内閣の支持率が低下の一途をたどっています。こうした中、一時は安倍晋三首相との「不仲説」もささやかれていた菅義偉官房長官の存在感が、再び高まっているようです。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授 ・若山滋氏は、菅官房長官が再び台頭してきている状況について「田中派の血脈のよみがえりを感じる」といいます。若山氏が独自の「文化力学」的な視点から論じます。
「菅政権」誕生?
先週末、菅義偉官房長官のテレビ出演が目立った。 官房長官にはもともと政権のスポークスマンとしての役割があり、定例の記者会見を行っているが、今回はその記者会見の枠を超えて、NHK、民放を問わず、テレビの報道番組に登場し、新型コロナウイルスの感染者数が急増する中でGo Toトラベルキャンペーンを実行することに国民の理解を求めた格好だ。 しかもキャスターの質問に対する受け答えは、各省庁に目配りが効利いたもので、批判を覚悟で、この国の政治の現実に責任を取るという気持ちがにじみ出ていた。 前にこの欄で、現政権は安倍政権というより「安倍・菅政権」だと書いたことがある。ところが今年に入って、安倍首相が重用する今井尚哉首相補佐官と菅官房長官とが不仲で、そのために首相と官房長官とのあいだに溝が生じているという情報が、インターネット上にあふれていた。この政権に近い事情通の友人の話を聞くと、その溝はかなり深く、実態としてはすでに「安倍・今井政権」といってもいいような状況であった。 しかしこのところの菅官房長官の露出度急増とその言動には、新型コロナウイルスへの対策を中心に、すべての政策に責任を取る覚悟が感じられ、逆に首相の存在感が薄れて、もはや「菅政権」ではないかというほどの空気が流れていたのだ。 国家の危機に臨んで存在感をます菅義偉とはどういうタイプの政治家か、そしてその「菅政権」のコロナ対策は、日本を危機から救うことができるだろうか。考えてみたい。