「偏差値の話抜き」の教員会議、宿題削減… 長崎の公立伝統校が、進路指導を一変させたワケ
変えるべきは大人のマインド
なぜ、諫早高校はここまでの変化を生み出すことができたのでしょうか。10年間を振り返り、後田先生は「変えるべきは生徒ではなく大人のマインド」だと指摘します。 「昨今『受け身の生徒が多い』という意見も聞かれますが、それは、大人が『受け身にならざるを得ない環境』にしてしまっているのかもしれません。宿題漬け、課題漬けにしていたら、主体性を発揮する余地はないですよね」 宿題を出してほしいという生徒もいるのでは、という考えも浮かびますが、後田先生は首を横に振ります。 「もちろんそのような生徒もいます。しかし、宿題がなくても主体的に勉強したいと思える環境をつくることが、大人の役割なのではないでしょうか。変化が激しい時代を生き抜くためには、学校はもちろん、保護者のかたも『決められたことをやらせることに固執しない』という意識を持つことが必要なのかもしれません」 実は、当初は取り組みに対して周囲から懐疑的な意見も挙がっていたそう。後田先生は、地道に校内の目線や価値観をすりあわせていくなかで、教師が抱える葛藤に気付かされたと言います。 「教師も、これまでの指導のままではいけないと気付いていて。社会が劇的に変わっていくなかで、受験指導だけが変わっていかないことにジレンマを抱えていたのだと思います。取り組みに対しても、徐々に前向きな意見をいただくことが増えてきました」
次なる進化は、対話から決断
いまや全国から注目を集める諫早高校のキャリア教育。それでもなお、諫早高校は改革の歩みを止めません。後田先生も、既に次の企画を進めているのだとか。 「たとえば講演会は、対話や抽象度の高い議論だけで終わっているという反省点があります。『対話ハイ』で終わらせず、対話を受けて決断まで持っていくよう進化させたいですね」 現在は、指導教諭として授業そのものを探究的な活動にする取り組みにも邁進中。これからの社会でしなやかに活躍する人材をいかに育成していくのか、今後の取り組みにも注目です。
【お話を伺った先生】 長崎県立諫早高等学校 後田 康蔵(うしろだ こうぞう) 教員歴27年目。同校に赴任して今年で13年目。現在は指導教諭。担当教科は物理。