ISS長期滞在、金井さん帰国会見(全文1)新しい時代の「宇宙の使い方」体感
足が弱るのではなくバランス感覚なくなる
本当に6か月、長いようであっという間の盛りだくさんのミッションで、帰る日が来ました。本当に、国際宇宙ステーションを去るときには、寂しいような、心残りな気持ちもしましたけども、その一方でようやく日本に、あるいはおうちに帰れるというそのわくわく感もあって、一緒に帰る2人の宇宙飛行士と、寂しさとうれしさとが混じり合ったとても複雑な気持ちでした。久しぶりのロシアのソユーズ宇宙船の搭乗だったんですけども、非常に事前の訓練、準備は万端で「よっしゃ行くぞ」というヨーヨーヨーと手を出していますけども、非常にいい乗りで前向きな感じで、自信を持って帰ってくる、そういった帰還のオペレーションでした。でもこれが宇宙見納めだなと、ほとんど窓の外を眺めているような状態で、あんまりコマンド、手伝いはしてなかったんですけども、さすがベテランの船長、シュカプレロフ船長は、自分の任務をしっかりとやられていて、非常にGも強くてきつかったんですけども、その中でも冷静に正確にオペレーションをしているコマンダーの素晴らしさ、6か月間一緒にミッションを行っていましたけども、彼の素晴らしさをあらためて認識するような、そういう帰還のオペレーションでした。 6カ月間、本当に6人の宇宙飛行士だけで生活をしていた中で、こうやってハッチが開いてレスキューチームの人に迎え入れられて、初めて、ああ地球に帰ってきたんだな、ミッション終わったんだなというのをしみじみと実感いたしました。現地には同期の大西宇宙飛行士が迎えに来てくれまして、その肩を借りながら、こうやって歩いておりますけども、実はこれ、足が弱って歩けないわけではなくて、筋力は非常に、体力トレーニングで残っていたんですけども、三半規管とかバランス感覚が非常になくなっていて、まっすぐ歩けないような状態で、あるいは歩いてもふらふらと千鳥足になってしまうような状態で、本当に人間の体の変化って面白いなと。行くときには結構楽だったんですけども、帰ってくるときには、こんなに重力って大変なものなのかとあらためてびっくりいたしました。 早速帰ってきて、すぐに筑波宇宙センターに戻りましてリハビリが始まりましたけども、われわれ日本独自のリハビリというようなことを目標にやらせていただいて、今回はかなり早い時期から筑波宇宙センターでリハビリを行わせていただくチャンスがありました。ご覧のとおり、これ1週間ぐらいなんですけども、ほとんどジャンプができてないですよね。バランス感覚は1週間くらいするとだいぶ戻ってきて片足立ちをすることができるような感じなんですけども、1週間たつごとに、あるいは1日たつごとに、どんどん体の感じが変わってきて、だんだん重力がある環境に適応していく、その過程を身をもって体験させていただいたのも、本当にミッションをさせていただいて、医師として宇宙を体験させていただいて、非常に貴重な経験だったなと思いますし、自分の経験を周りの医学管理の担当者であったりとか、あるいは広く一般の皆さんにお伝えするのも非常に重要だなと感じております。 ちょっと駆け足ではございましたが、ミッションの概要については以上とさせていただきます。 司会:報告は以上でございます。では金井は着席をさせていただきます。恐れ入ります。それでは質疑応答に移ります。ご質問のある方は挙手いただきまして、ご所属、お名前をおっしゃってからご質問をお願いいたします。ご質問ありましたらどうぞ。 【連載】ISS長期滞在、金井さん帰国会見(全文2)へ続く