日本人が持つ「うまみ」の味覚が、“海外のSUSHI”との格差を生んでいる
寿司職人の小川洋利さんは、日本のすし文化を全世界に広めるため、世界50カ国以上にわたって、すし指導員として外国人シェフに調理指導をされています。本稿では、小川さんが海外の寿司店で目撃した驚きの実態について、、書籍『寿司サムライが行く! トップ寿司職人が世界を回り歩いて見てきた』からご紹介します。 【写真】イギリス人が感激した"日本人の服の畳み方" ※本稿は、小川洋利著『寿司サムライが行く! トップ寿司職人が世界を回り歩いて見てきた』(キーステージ21)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
高カロリー万歳、低カロリー犯罪!「寿司=ヘルシー」の勘違い
私は仕事でいろいろな国へ行くのでその都度、各国の寿司店に出向き寿司を食べにいきます。その国によって寿司のスタイルや食材、店のデザインなどはさまざまで、とても興味深く勉強になります。 そこで私が一番思うことは、海外の寿司はとても高カロリーだということです。隣で寿司を食べているふくよかなお客様に「お寿司は好きですか?」と聞いてみると「大好き! だって、とてもヘルシーだしダイエットにもよいじゃない」と。 エビとサーモン、マヨネーズ、アボカドを裏巻きにし、さらにパン粉で揚げ切って盛りつけたあと、得体の知れないソースとダメ押しに天カスをふりかけた脂ギトギトの寿司を食べながら......。私はその寿司を見ながら言葉を失い、うなずくことしかできませんでした。 このようなスタイルの寿司を多くの国で目にします。海外の寿司の特徴として、創造性がありソース文化でもあるので、未知なる味を作ります。調理方法、調味料、いろいろな技法を用いて料理する志向があります。 逆に日本の寿司は、食材のうまみを味わい、いかにその食材を引き立て、表現するかを考えます。また、日本には春、夏、秋、冬と四季があります。一番おいしくなる時期、そのときに入った「旬」を楽しみます。日本の寿司は基本的に醤油をつけて食べます。海外に行くと醤油以外に甘いソースや、いかにも辛そうなソース、香辛料が出てきたりします。 仕事で海外の寿司店から、調理指導の依頼で調理場に入ってみると、寿司を握るすぐ近くに揚げ場が設置してあったり、いろいろな香辛料やソースを作っていたりと、日本の寿司店では考えられない光景を目にします。 聞いてみると「魚には味がないから、味にパンチを効かせるために、いろいろな調理をしたり、ソースを作っているんだ」と言われ困惑したときもありました。寿司を作る側がこのような高カロリーのSUSHIを提供し、それを食べているお客様がヘルシーと思い込んで太っていくのだから......。