日本人が持つ「うまみ」の味覚が、“海外のSUSHI”との格差を生んでいる
魚は味がない!?
どこの国に行っても、海外の人たちは、寿司に醤油やソースをガッツリとつけて食べています。話を聞いてみると、「魚には味がない」という。日本人は、五味という5つの味覚をもっています。甘い、しょっぱい、すっぱい、苦い、そして「うまみ」の5つ。 「うまみ」というのは日本人が発明した言葉で、世界中で使われています。「うまみ」とはアミノ酸の一種で、グルタミン酸とイノシン酸とグアニル酸という成分によってできており、主に代表的なのが、こんぶ(グルタミン酸)、かつおぶし(イノシン酸)、干ししいたけ(グアニル酸)に含まれている日本の三大だしです。日本料理は、この3つでだしをとって作られています。 海外の人たちはこの「うまみ」を感じない。だから、海外の寿司は、ソースを作ることに重点が置かれたのでしょう。こうして、海外では、日本食や寿司の一つの基本が失われてしまう。寿司を味わう一般の人にも、さらに作る側の料理人にも「うまみ」という味覚がないので、海外の料理人たちの仕事にも味がなくなってしまう。
寿司にはパンチが必要? それよりも魂込めて作ってくださいという願い
前にも書いたように、寿司職人として外国の人の多くはうまみがわからない。「うまみ」よりも「甘い」「辛い」といったはっきりした味を求めがちです。 「魚には味がないじゃん!」なんて言い出して、こしょうをふったり、とうがらしを混ぜたり、マヨネーズをかけたりするのをよく見かけます。どうしてもソースに凝ったり、揚句のはてには、シャリにソースを混ぜたりしてパンチを求めてしまう。 食に対する考え方は国によって違えども、本当に大事なのは、お客様によろこんでいただくこと。包丁をしっかり研ぐとか、細菌が繁殖しないように衛生、安全に気をつけるとか、そういった基本をしっかり守れているかだと私は思っています。 海外の人々が来日するにあたって楽しみにしていることは、1位に挙げているのが「食文化」、2位がアニメなどの文化。日本に来て、本物の日本食を食べても、自分の国に帰ると本物を食べられる店がない。お客のレベルに、お店、職人の知識、技術がついてこれていないのが現状です。