【40代・50代ご用心!「痔」はお尻の生活習慣病②】軽度のいぼ痔は誰でも持っているって、知っていますか?
更年期世代の女性に多い痔のタイプは痔核(いぼ痔)と裂肛(切れ痔)。これらは日頃の生活習慣が原因で引き起こされる。そもそも痔になりやすい人、なりにくい人の違いは何だろうか? 女性のための肛門科専門外来のエキスパート、消化器外科医の高橋知子さんに伺った。
お尻の構造と肛門の働きについて知っておこう
肛門は消化管の出口として、排泄機能を担う場所。私たちが便意を感じた際に排便を我慢できるのは「内肛門括約筋」や「外肛門括約筋」を自分の意思で収縮させ、肛門をキュッと締めることができるからだ。 と同時に、肛門部の密着をよくしてくれるのが、小さな血管が網目状に集まっている「外痔静脈叢(がいじじょうみゃくそう)」と「内痔静脈叢」という部分。これらの静脈叢は、いわば“肛門部のクッション”のような働きをしている場所だ。 「実は、この“肛門部のクッション”が痔核のもととなっているんですよ。私たち人間は直立の姿勢で二足歩行していますから、ちょうど肛門のあたりに重力がかかりやすく、年齢を重ねるとともに、肛門周囲の静脈叢がうっ血しやすくなります。”肛門部のクッション”は、いわば痔核(いぼ痔)の発生母地。つまり、誰もがごく軽度の痔核を持っているということです」(高橋先生)
肛門の内側の内痔核が痛くならないのはどうして?
肛門は、大腸の粘膜と肛門上皮(皮膚)が隣接する特殊な場所。イラストのように、「歯状線」という境界線を境にふたつの組織が分かれている。 「歯状線を境に、上の粘膜には痛覚がありません。そのため、大きくなった内痔核が排便時に傷ついて出血したとしても、肛門の内側にとどまっている限りは痛みを感じることがないのです。一方、歯状線より下の上皮には痛覚があります。そのため肛門のふちにできた小さな痔核がうっ血し、血豆のようになる『血栓性外痔核』ができたときには、強い痛みを感じます」 例えば内痔核が大きくなったり、複数の内痔核があったりしても、歯状線より奥にとどまっている場合は痛みを感じない。そのため、「自分には内痔核がある」と気づいていないケースが多いのだそう。ただし、大きくなった内痔核が肛門の外に飛び出したままの状態となり、それが肛門で締めつけられてしまった場合には激しい痛みを伴う。