障害のある兄弟姉妹と育った「きょうだい児」が自身の進学・就職・結婚について考えたこと #令和の子
「うまくいかないのは妹のせい」…自暴自棄になった過去
社会保険労務士として働く30代男性のKさんは、埼玉県の実家で両親と、知的障害、発達障害、自閉症スペクトラムを抱える2歳離れた妹と暮らしています。 大学卒業後は不動産会社に就職。慣れない仕事でさまざまなストレスを募らせていたとき、一緒に暮らしている妹が、睡眠障害から夜中に騒ぐようになりました。Kさんは、仕事の厳しい状況と重なって自暴自棄となり、大学時代の友人へ一方的に胸の内を吐露したメールを送ることもあったといいます。 しかし、そんな時期が2、3年続いたあるとき、Kさんに転機が訪れました。 「勤務先のハードすぎる働き方に疑問を持ちはじめたんです。人生がうまくいかずに不満を抱えるなかで〈なにか資格を取れないか〉と考えるようになり、たどり着いたのが社会保険労務士でした」 その後、社労士の事務所に転職したKさんは勉強に励み、社労士の資格取得を機に独立しました。現在は、自身もきょうだい児として育った立場から、障害施設をサポートする取り組みをはじめています。 「いま、グループホームや放課後等デイサービスなどの運営支援をされている行政書士の方々とつながっています。私も社労士として、そうした福祉施設で働く方の働き方支援ができればと考え、徐々に行動に移しているところです」 そんなKさんには、過去にひとり、結婚を意識した女性がいました。その人とはなんでも話し合う間柄で、妹のことも話していましたが、結婚には至りませんでした。 「社会人になってから、うまくいかないことを妹のせいにしていたんです。自分の人生がうまくいかない理由にしていたんです」 しかし、いまは違う考え方をするようになりました。 「家族のことは、変えられない事実ですし、相手がどう思うかは相手次第なので。自分がくよくよ考えても仕方ない、そう思っています」
大事なのは「親との愛着関係」の構築
AさんとKさんは、将来の同胞(どうほう:障害のある兄弟姉妹)の世話について、親から期待されるような言葉はとくになかったといいます。ただ、Aさんのように、人知れずプレッシャーを感じているきょうだい児の方もいます。 一般社団法人Yukuri-te代表理事で、作家としても活動する小児科医の湯浅正太氏は、子どもにとって大事なのは「安心安全な存在の親との愛着関係」を築くことだといいます。 「子どもは学校生活でさまざまな新しいイベントに遭遇し、不安が生まれます。そこで親に抱きしめてもらったり、一緒に話をしたりすることで、不安を解消します。しかし、親は障害のある子にかかりきりなので、不安が解消できない。その結果、きょうだい児は孤立してしまうのです」 親が子どもたちへ対等に関われるようにするためには、社会的な支援の基盤の構築が必要だと、湯浅氏は指摘します。 「親も子どもたちに平等に関わりたいと思っています。関われないことで自分を責める親も多いのです。だから、社会が家庭を支える必要がある。社会が家庭を支えて、親の心、時間、金銭的余裕を生み出すことで、はじめてきょうだい児がすくすく育つ環境が生まれます。親が余裕をもって個別に子どもたちに関われる環境が作れるよう、社会が家庭を支援する基盤を築くことが重要です」 さらに湯浅氏は、親ときょうだい児が正しい知識を共有することの大事さを訴えます。 「きょうだい児が結婚するときに大切なのは、障害のある家族のことをきちんと結婚相手に伝えられるかということ。世の中には障害を受け入れられない、不安を覚える人もいます。ですが、正確な知識を持っていれば、障害について正しく説明できます。そのためにも、家庭で情報共有をしておくことが大切です」
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