「婚姻って何?」 ――同性婚訴訟で違憲判決、 原告の二人が問う結婚のあり方
人の目をはばからずに暮らしたい
今回、北海道の3組6人が国を提訴した理由は、自治体に提出した婚姻届が受理されず、税法上の配偶者控除を受けられないなど法的・経済的な不利益を被り、精神的苦痛を受けたという立て付けになっている。これは東京など他の地域でも同じだ。
遺族年金をはじめ、結婚していないことで受けられない利益はさまざまある。また、どちらかが重病になった場合、家族しか病棟に入れないと言われたら、いまの関係性では入れない。互いの家族で葬儀などが発生した場合でも忌引などの申請ができない。 一方で、国見さんもたかしさんも、法律が整備されていないことで強烈につらい思いをしてきたかというと、そうではないと打ち明ける。たとえば結婚しないとパートナーが亡くなったとき、財産が親族の手に渡ってしまうという懸念。それは事前に遺贈に関する公正証書を作成しておけば対応できる。また、結婚していなければ税法上の配偶者控除などは受けられないが、互いに一定以上の収入がある場合、もとより受けられない制度でもある。 むしろこの訴訟で訴えたいのは、愛し合う二人が結婚という形で公的に認められ、誰の目もはばかることなく一緒に暮らせることだと国見さんは言う。 「子孫を残すための婚姻というのは、家制度を重視した大日本帝国時代の観点でしょう。いまの婚姻はあの時代の婚姻と同じではないと思うんです。異性婚で子どもをもたないかたもたくさんいらっしゃいます。であれば、異性間、同性間で婚姻の区別をするのはおかしいんじゃないかと」
同性が結婚できないおかしさ
国見さんらの弁護団の一員である加藤丈晴弁護士もこう述べる。 「異性間なら結婚できるのに、同性間でできないのはなぜですかと。その選択肢がないのは権利としておかしくないですかと。要は、個人の尊厳の問題なんです」 だからこそ、今回の判決で憲法14条1項の「法の下の平等」に反すると地裁が認定したことには非常に満足しているという。ただし、判決の内容はよく理解する必要がある。 「メディアは、同性婚の否定そのものが違憲という書き方をしているところがありますが、正確に言えば、そうではない。判決は、婚姻に伴う法的利益を与えられないことが差別にあたり、憲法14条1項に違反しているという趣旨。今後は、その利益を同性カップルがどのように受けられるようにするかについて、立法府、つまり国会で法改正の議論が必要だということです」