「婚姻って何?」 ――同性婚訴訟で違憲判決、 原告の二人が問う結婚のあり方
二人にとっては愛情を互いに確認できる日々の始まりだったが、一方で周囲に公言しにくい生活の始まりでもあった。
男性同士で暮らすという後ろめたさ
札幌で同居することを決めた二人は賃貸物件を探した。男性同士だったため、仲介会社には「ルームシェア」と伝えた。 国見さんは同居後しばらくして教員に転職した。だが、自身やたかしさんとのことは周囲に語っていない。道内で複数の首長や教育委員会関係者がLGBTの権利について理解を示しているのは知っているが、公表するとどういう反応があるかはわからないからあえて公言していない。
ただ、その黙っているという状態が、日々のうっすらとした居心地の悪さにつながっていると、たかしさんは言う。 「男性同士で暮らしていることを隠す。そのことが何か悪いことをしているような後ろめたさ、尊厳を損ねられているような感じがするんです」 これまでに何度か、同性愛者であることを差別的に扱われた。
「お二人で泊まるんですか?」
7~8年前、新千歳空港近くのホテルでチェックインした時のこと。フロントの女性がワンベッドに気づくと露骨に怪訝な表情をした。たかしさんに繰り返し確認したうえ、「ちょっとお待ちください」と奥に消えた。出てきたのは「仏頂面」の男性上司。彼も嫌な顔を隠さなかった。 「『お二人で泊まるんですか?』とまた尋ねてきました。はいと返すと、しばし考えたあとに『じゃあ、今回は特別に広い部屋にします』と別の部屋を提供されました。その時点ではその場を収めたい一心で言い返すことができませんでした」 国見さんは言う。 「異性愛者が二人一緒に泊まるのは何も不思議がられないのに、同性愛者が泊まろうとすると嫌がられる。なぜ不平等に扱われるのか、理由がわからない」
同性愛に対するちょっとした言葉や表情に傷つけられたことがこれまで何度となくある。そのため同性愛者であることは秘めてきたが、それはストレスにもなる。 一方、同性婚訴訟を起こしてからの2年間で新たに気づいたこともあったと、たかしさんは言う。 「訴訟を起こしてから、記者の方が取材に来るようになりました。嘘はつけませんから、すべて話します。最初は緊張しました。でも、何度か受けているうち、ものすごく楽な気分でいることに気づいたんです。何も隠さなくてよかったからです。ゲイであり、ゲイカップルであることをそのまま語れる。それがこんなに楽なんだということを初めて体験したんです」 だから、たかしさんは訴訟を起こしてからのほうが、それまでの不合理さに気づき、訴訟の本質を考えることにもなったという。