日本は四季から二季に変わった? 暑い夏が続くと思ったら急に冬に。専門家が語る異常気象
異常気象は止められるのか?タイムリミットは
── 異常気象のニューノーマル化が進む中、私たちの生活にどのような変化があるのか教えてください。また、この状況はどれだけ危機的なものなのでしょうか。 まずは農業の変化です。 今年は既に米の品薄がありましたが、これも普通になります。 暑さによって米の作況指数が落ちて、一等米の比率も下がる。 しかし、多くの人が美味しい米を食べたいからブランド米に殺到して、結果的に品薄になってしまうでしょう。 対策として、暑さに強い米に切り替える必要がありますが、それも難しいかもしれません。 消費者は美味しいブランド米を食べたいと思うからです。 暑さに強い米があっても、収穫が難しいブランド米を消費者が求め続けたらどうでしょうか。 農家の方も収入のために消費者の期待に応えようとするはずです。 でも、暑さによって収穫も限られているから品薄になる。 そんな状況を変えるためには、私たち消費者も意識を変える必要があるでしょう。 水産物も海流が変わった影響で、獲れる海の幸に変化があり、減少も見られています。 昆布の収穫も危ぶまれ、日本の食文化が失われてしまうかもしれません。 この状況は本当に危機的なものですが、日本ではその認識が不足しています。 ヨーロッパでは多くの人が自分事と捉え、日常会話で温暖化の話題が出ることもあり、どうすれば二酸化炭素を出さない生活を送れるのか、と真剣です。 世論が後押しするから、政府も環境問題に取り組むよう舵を切っていますが、そういう意味では日本は非常に遅れている気がします。 その一因は教育の差です。 イタリアでは小学校から気候変動に関する授業が必修科目で、その原因をしっかり学んでいます。 ヨーロッパでは環境問題のメインは気候変動。環境問題を語るとき、最初の切り口は気候からなのです。 しかし、日本では環境問題を学ぶとしても、気候の問題はその一部でしかありません。 世界の平均気温が産業革命前より、1.5度上がると地球の気候は非常に危険な状況になると多くの研究者が指摘していることをご存じでしょうか。 偏西風の蛇行も黒潮の状況も二酸化炭素を削減すれば、その分だけ元に戻る可能性はありますが、平均気温が1.5度超えてしまったら、気候変動は暴走すると考えられています。 どんなに二酸化炭素を削減しても、異常な気象は緩和されず、後戻りできない状況になってしまうのです。 この1.5度の境界を臨界点、英語ではティッピングポイント(tipping point)と言いますが、実は既に1.4度を超えています。 残りはたった0.1度と崖っぷちの状況ですが、日本の多くの人はそれを知らない。 中には、地球の気候は氷河期に向かっているから、焦って温暖化対策を進める必要はないと主張する人もいます。 確かに、地球の気候は氷河期と間氷期(気候が比較的温暖な時期)がありますが、これは10万年という長いスケールで繰り返されているものです。 間氷期に入った時期は縄文時代なので、そういう意味では何万年後には氷河期は来ますが、今起こっている温暖化は時間のスケールが違います。 それどころか、二酸化炭素がこれだけ増えてしまったら、太陽と地球の位置関係で訪れる氷河期もやってこないという説すらあるほどです。 臨界点に到達するタイムリミットは下手したから5年かもしれません。 2年前までは私もこれほどの危機感はありませんでしたが、去年と今年の異常を見る限り、2030年までには何とかすべき問題だと感じています。 2030年を達成目標とするSDGsも、最も重要度の高い課題の1つに気候変動の対策を挙げています。 日本でもSDGsに取り組む企業や団体が増えましたが、多くが問題を横並びに考えている印象です。 気候変動というベースとなる問題を解決しなければ、すべて崩れてしまうのに。 だから、SDGsに取り組む多くの方々に、それを知ってほしいと思います。