日本は四季から二季に変わった? 暑い夏が続くと思ったら急に冬に。専門家が語る異常気象
これは前例にないことですが、なぜ黒潮の流れが変わったのかという点も気になるところですよね。 完全に原因が解明されたわけではありませんが、海流の変化は偏西風という地球の上空を西から東に流れる風が激しく蛇行し、これが海流を引っ張っているから、と考えられています。 以前の偏西風は日本付近の上空で吹いていましたが、今は逆で日本を迂回するように北へ向かうようになりました。 そうすると、黒潮もこの気流に引っ張られて、北に流れてしまうのです。 偏西風が蛇行する現象も、温暖化が原因と考えられます。 地球の気候は偏西風を境にして、北が寒く、南が暑くなりますが、温暖化の影響で北極地方が温かくなると、偏西風は蛇行して日本よりも北に吹きやすくなる。 今年も猛暑でしたが、偏西風が圧倒的に北へ向かってしまったため、日本は温かい空気に覆われてしまった。 つまり、異常な気候と異常な海流は連動しているのです。 日本の夏が異様に暑くなる理由は、さらにあります。それが南北傾斜高気圧です。 南北傾斜高気圧は新型の高気圧で、偏西風の蛇行が関係して発生します。 温暖化によって北に蛇行した偏西風は、日本を覆うように凸の形に流れますが、するとオホーツク海あたりの上空に時計回りの渦ができて、これが高気圧を発生させる。 そして、この高気圧がまっすぐ降りれば北海道より北に位置するはずが、南の方に傾斜して日本付近に中心を持ち、長い間居座り、日本を暑くしているのです。 南北に傾いた高気圧だから「南北傾斜高気圧」と名付けたのですが、これが偏西風の蛇行が激しくなり始めた2010年頃から、ずっと発生しています。
夏が終わったら急に冬!温暖化でも冬が寒い原因
── 逆に、夏が終わると急激に寒くなる原因はどこにあるのでしょうか。また、二季の他に注目すべき異常気象があれば教えてください。 夏は偏西風が蛇行して北に吹くから暑くなると話しましたが、冬の寒さはこの向きが逆になることが原因です。 偏西風の向きが変わるきっかけは、夏と冬で異なります。 もともと偏西風は西から東へ、寒い地域と暖かい地域の境目に吹きますが、夏は温暖化の影響で熱くなった大陸の空気が日本に流れ込むため、それを避けようと北に蛇行して暑くなる。 逆に冬は日本の西にあるシベリア大陸から、非常に冷たい空気が温かい海を目指して北西風が吹き、その影響で偏西風は南に蛇行します。 要するに、大陸と海洋の温度のコントラストが夏と冬で逆になるので、夏は偏西風がより北に蛇行し、冬は南に蛇行する。 さらに、温暖化によって蛇行に拍車が関わるため、温暖差も激しくなると考えられるのです。 偏西風の向きが逆になる時期は、だいたい11月から12月頃で、いきなり寒波がやってきます。 そして、この寒波は昔とは違うものです。 なぜなら、冬も日本近海は水温が高いままで、熱いお風呂の上に冷たい空気がやってくるようなものだから、大量に水蒸気が発生し、雪雲を発達させて大雪を降らせるからです。 温暖化によって冬の温度も高いものの、偏西風の蛇行によって寒波は強く、降るときは豪雪。 だから、夏と冬だけがはっきりしていて、四季から二季に変わったと言える状況なのです。 二季の他に注目されている異常は、まず豪雨が挙げられます。 近年は、晴れれば猛暑、降れば豪雨という極端化が顕著です。 これも海面水温が原因となります。水温が高いから水蒸気が大量に発生し、それが雨雲になって豪雨を降らせる。 だから、豪雨も温暖化によるものと言えるでしょう。 昨今は、猛暑に豪雨、豪雪など異常気象が頻発していますが、間もなくこれが普通の状態になると考えています。 いま気温が40度になれば異常と感じると思いますが、このまま温暖化が進めば、それがニュースになることもありません。 台風も同じことが言えます。 日本の近くで動かなかったり、ゆっくり動いたり、今年も異常な台風が発生しましたが、これが普通になってしまう。 これを私は異常気象の「ニューノーマル化」と言っています。 今まで異常と考えていたものが普通になる。そんな状態でさらなる異常が起こったら、とんでもないことになるかもしれません。