コロナ禍の中、成立目指した3法案「年金」「種苗」「スーパーシティ」 坂東太郎のよく分かる時事用語
「登録品種」の自家増殖禁止が争点
問題なのは「一般品種」にはみられない新しい特性を持つと国が認めた「登録品種」。これの海賊版が他国に出回ったらたまりません。ここまでは異論のないところでしょう。改正案の争点は「登録品種」の自家増殖を禁じる、としている点です。 農家は栽培する際、育成者権(著作権に相当)を持つ種苗メーカーから種などを買うか、「種籾」のように育てた作物から種を取ったり株分けしたりして次の年に栽培するというサイクルを繰り返すかです。後者を自家増殖・自家採種と呼び、はるか昔から続いてきました。これが「登録品種」では原則認められなくなり、育成者権者の許諾が必要になるのが今回の改正案で、これまでの「原則認める」から大転換となるのです。もし法案が成立すれば、「登録品種」に関しては「買う」しか選択肢がなくなります。 農林水産省は、自家増殖を認めていると、いくら持ち出し禁止規定を作っても管理の目が届かず、事実上野放しになってしまう。「登録品種」は種子全体の約5%に過ぎないので農家への悪影響は限定的だと説明。しかし「そんなはずはない」と反発が噴出しているのです。 まず「一般品種」(改正後も自家増殖OK)と思っていたら実は「登録品種」であったとか、そうだと主張される可能性があります。コメだと「コシヒカリ」は一般品種で、近年人気の「ゆめぴりか」(北海道)や「つや姫」(山形県)は登録品種。では系譜的にまったく関係ないかというと祖先の1つがコシヒカリです。 そもそも遠い昔から当然のように認められてきた「自家増殖」を奪うのは農家の権利侵害という訴えも傾聴に値しましょう。
【「スーパーシティ」法案】
「スーパーシティ構想」を盛り込んだ「国家戦略特区法改正案」は今国会で着々と審議が進み、5月27日に可決、成立しました。さて「スーパーシティ」とは何でしょうか。人工知能(AI)やビッグデータといった最先端技術を活用した「未来都市」を実現しようという構想です。 たとえば、道路は自動走行が全面解禁され、走行している自動車のデータが解析され、渋滞も駐車場満杯もなし。配達はドローンが担い、支払いはキャッシュレス。医師の代わりにAIが診断し、りロボットが介護を引き受ける。遠隔診療もOK。教育も「AI先生」が登場し、遠隔授業も一般化。ロボットが犯罪を未然に防ぐ……などなど。新型コロナウイルス禍で図らずも広がるキャッシュレスや遠隔医療・教育、街の混雑具合の観察などを先取りしていると推進派は訴えています。