コロナ禍の中、成立目指した3法案「年金」「種苗」「スーパーシティ」 坂東太郎のよく分かる時事用語
企業年金など「私的年金」の拡充
当局にとって、年金がもらえる65歳以上なのに働いて保険料を納めてくれる高齢者は、たとえ厚生年金を受け取りながらでも、ありがたい存在。現行法だと、65歳以降も働き続けて厚生年金の保険料を納め続けても、年金として反映されるのは70歳になった時点か退職した時点でした。改正案では、この「70歳で一括」 から66歳以降、1年ごとに納めた保険料の分の年金額が増えていく制度を導入します。「よし、来年も頑張ろう」という気持ちになってもらえるのが狙いです。 企業年金などの「私的年金」も拡充されます。私的年金とは、先に説明した公的年金(1階、2階部分)に上乗せして支給される年金で「3階部分」にあたります。企業年金はそのうち会社が独自に設けるもので、「確定給付企業年金」と「確定拠出年金」があります。今回要件が見直されるのは「確定拠出年金」です。 過去には大企業を中心に「確定給付企業年金」が主流でした。将来の給付額をあらかじめ決めておき、その額が加入者に支払われる仕組みで、運用リスクは会社側が負いました。しかし長引く景気低迷で採用社は減少し、代わりに台頭したのが「確定拠出年金」です。拠出額(掛け金)をあらかじめ決めておき、運用実績によって給付額が変わる制度で、運用方法は加入者が選び、リスクも加入者が負います。 「確定拠出年金」にも「企業型」と「個人型」があります。 ・企業が掛け金を負担して従業員が運営する「企業型」 ・従業員自ら掛け金を用意する「個人型」=「iDeCo(イデコ)」 現在は「企業型」に加入できる年齢が65歳未満、「個人型」が60歳未満ですが、それぞれ「70歳未満」「65歳未満」まで伸びます。
【種苗法改正案】
猛烈な批判を浴びて今国会での成立を断念した検察庁法改正案と同じく、こちらも「不要不急」と反発を受け、成立見送りが取り沙汰されているのが「種苗法改正案」です。 この法案は、種や苗など新品種の開発育成の振興及び保護を目的としています。私たちが口にする農作物の大半は、雑草のように勝手に育つわけではありません。少しでもおいしく、大量に、病気にも強いようにと改良が重ねられ、農家が営々と構築してきたノウハウを駆使して育て上げるのです。 品種改良などの努力で誕生した種苗は知的財産といえます。こうした優良な品種が海外に流出してしまえば、手にした国は苦もなく生産できるので、それを防ぐべく厳罰化しようというのが改正案の主旨です。 著作権法(知的財産法の1つ)で例えてみましょう。著作物は著作者が権利を有し、第3者が勝手にコピーし、さらに販売すれば罰せられます。不当な手段で流出した農産品で儲けるのはこれに当たります。いわば“海賊版”です。 一方で、何でもかんでも保護の対象となるわけではありません。下仁田ネギや練馬大根といった地域で育まれてきた在来種や知的財産として登録されていない品種(著作権フリーに似る)、または登録期限が切れた品種切れ(明治時代の文豪作品のような著作権切れに似る)は「一般品種」として誰でも利用できます。