7連覇の米国に完敗も日本女子バスケット代表が手にした銀メダルの価値「試合ごとに違う選手が活躍するスーパーチーム」
すべてを出し切った充実感と悔しさとを同居させながら、世界中を驚かせてきたバスケットボール女子日本代表の快進撃が銀メダルとともに幕を閉じた。 東京五輪最終日の8日にさいたまスーパーアリーナで行われた決勝。すでに男女を通じて五輪史上で初のメダルを確定させていた世界ランキング10位の日本は、世界ランキング1位の女子アメリカ代表のパワーと高さ、そして日本のお株を奪う速さの前に、第1クオーターから一度もリードを奪えないまま75-90で敗れた。 五輪での連勝を「55」に伸ばし、団体競技での最多記録に並ぶ7連覇を達成したアメリカの底力に屈したものの、身長差をスピードと高精度の3ポイントシュートで補ってあまりある戦いで大会を席巻。過去の最高位だった1976年モントリオール五輪の5位を大きく更新した日本の躍進は、未来を明るく照らす羅針盤になった。
“絶対女王”米国の高さと日本対策に苦闘
負けて悔しさを抱かないアスリートはいない。舞台が金メダルをかけた決勝ならばなおさらだ。それでも日本の攻撃をけん引し続けた身長162cmの司令塔、ポイントガードの町田瑠唯(28・富士通)の第一声は日本が抱く思いを代弁していた。 「負けたのは悔しいけど、銀メダルを取れたことは嬉しい。いままで女子バスケットはメダルから遠いと言われていたと思います。金メダルを目標にしてきましたが、それを信じた人もそれほど多くなかったはずです。今大会の銀メダルでいろいろな方に女子バスケットの魅力が、世界へ通用することが伝わったと思っています」 予選ラウンド第2戦で69-86と敗れ、今大会で唯一の黒星を喫していたアメリカと再び顔を合わせた決勝。五輪における55連勝と7連覇がかかる大一番で、日本の速さと得点力を脅威だと認めた絶対女王は徹底した対策を講じてきた。 コート上で群を抜く速さを武器にしてきた町田ではなく、町田がパスを出す3ポイントシューターを密着マークする逆転の発想で日本を封じにきたのだ。 日本の得点源を担ってきた2人、パワーフォワードの宮澤夕貴(28・富士通)が放った3ポイントシュートは2本。女子ベルギー代表との準々決勝の残り15.2秒で起死回生の逆転3ポイント弾を決めた、シューティングガードの林咲希(26・ENEOS)に至ってはわずか1本に終わり、しかもともにリングを外している。 町田に3ポイントシュートはない、と見越した上での戦略。インサイドには身長203cmのセンター、ブリトニー・グリナーが立ちはだかる。喫したブロックが「12」を数えた展開でどうしても高さへ恐怖が脳裏をかすめ、シュートの精度を微妙に狂わせる。