女子バスケ“残り15.2秒の奇跡”はなぜ起きたのか…強豪ベルギーを1点差で破り悲願の初4強!
日本バスケットボール界の歴史が塗り替えられた。世界ランキング10位の女子日本代表が、試合終了間際に決めた劇的な3ポイントシュートで同6位の女子ベルギー代表を86-85で撃破。男女を通じて五輪史上で初めてベスト4進出を決めた。東京五輪13日目の4日にさいたまスーパーアリーナで行われた準々決勝。一時は13点差をつけられた日本は、粘り強いディフェンスと全員がどこからでも打てる3ポイントシュートで猛追。2点のビハインドで迎えた最終第4クオーターの残り15.2秒で、シューティングガード林咲希(26・ENEOS)が起死回生の逆転3ポイントシュートを決めた。 女子バスケットボールが初めて実施された、1976年モントリオール五輪の5位を上回った日本は6日の準決勝(さいたまスーパーアリーナ)で、予選ラウンドで74-70と勝利している世界ランキング5位の女子フランス代表と対戦する。
林が決めた逆転の3ポイントシュート
残り15.2秒…さいたまスーパーアリーナに奇跡が起きた。得点は83ー85。運命の逆転の3ポイントシュートがゴールリングに吸い込まれていく。完璧な手応えが残っていたのだろう。林は、3ポイントシュートを放った両手をそのまま天井へ突き上げながらボールが描く美しい放物線の行き先を見届けていた。 「一瞬の出来事でしたけど、はっきりと覚えています。自分のリズムで落ち着いて打てました。プレッシャーも感じませんでしたし、日々の練習のおかげだと思っています」 残り37.4秒でフリースローを2本決められ、2点のリードを許した。追い詰められても不思議ではない状況で、日本は24秒の制限時間をめいっぱい使って攻め続けた。 そして、ポイントガード町田瑠唯(28・富士通)が林へボールを託す。3ポイントラインのやや後方でパスを受けた林は、ブロックしようと必死の形相で飛び込んでくるベルギー選手を含めて、自らを取り巻く状況をはっきりと把握していた。 シュートフェイクを入れてブロックをかわすと、すかさずシュートモーションに入る。より高い確率を求めて、ゴール下へドライブしてシュートする選択肢はなかった。 「自然の流れで最後のシュートになりました。それまで3ポイントシュートが落ちていましたけど、また外したら、という怖さもありませんでした。コートの上に立っている以上は、与えられた仕事を果たすことが自分の使命だと思っていたので」 仕事とは予選ラウンドの計3試合で、参加16ヵ国中で最多となる12本を決めていた3ポイントシュートとなる。当然ながらベルギーに警戒され、それまで7分の2の成功数にとどまっていた伝家の宝刀を、残り時間を把握した上で完璧に決めてみせた。