恐竜王国・福井の最新研究事情【前編】新種化石の発掘、デジタル古生物学、来春創設の新学部…話題相次ぐ
2024年3月に北陸新幹線が延伸した福井県。国内有数の「恐竜王国」であることは、同県のプロモーションなどを通じて多くの人が知るところだろう。今年、ホットな話題が相次ぐ福井のトップブランド「恐竜」の最新研究事情を取材した。
カナダ、中国と並ぶ世界三大恐竜博物館
福井県の県庁所在地の福井市から1時間ほど山あいにある勝山市。恐竜王国の中心地であるこの街には「福井県立恐竜博物館」が置かれている。同市を「中心」と表したのは博物館の存在が全てではない。「フクイ」などの地名を与えられた福井県の新種恐竜すべてが、この勝山市から発掘されているからだ。
2000年に開館した博物館は、恐竜を中心に展示する国内最大級の地質古生物学専門の施設だ。カナダ、中国の施設と並ぶ世界三大恐竜博物館の1つといわれている。昨年度末までに累計1300万人超の入館者が訪れ、新幹線延伸を見据えた2023年には拡張を伴う大リニューアルを敢行。満を持して迎えた今年度、開館以来の悲願であった年間入館者数100万人の達成も現実味を帯びている。
新種すべてが見つかった北谷の現場
我々はまず、勝山市北谷町にある発掘現場を訪れた。新種恐竜すべてが発掘された場所で、2011年度までに調査した区域は天然記念物に指定されている。恐竜博物館の付属施設「野外恐竜博物館」の一部で、この場所から切り崩した岩石から化石を発掘する体験ツアーがあるため、一般の人々にも大人気のスポットだ。
訪れたのは夏の盛り。車の周りを飛び回るアブの大群に戸惑っていると「このあたりはクマも出ますよ」と今井さんが笑いながら教えてくれた。世界に誇る北谷の発掘現場は、動物や虫たちが主役の人里離れた山深い渓谷にある。 この地形は渓谷を流れる杉山川が山を削ってできたもの。露頭した地層から貝などの化石が見つかるため、古くから地元の愛好家に親しまれていたという。1982年に中生代のワニ化石が見つかると状況が一変。福井県の事業として1988年に試掘調査、翌1989年には本格的な発掘がスタートし今日に至る。