恐竜王国・福井の最新研究事情【前編】新種化石の発掘、デジタル古生物学、来春創設の新学部…話題相次ぐ
新種恐竜の発見は2000年に日本初の新種となったフクイラプトルを皮切りに、これまでに計6種が見つかった。研究中の化石の中にも、新種の期待がかかるものが多い。そのほかにも新種の原始鳥類フクイプテリクスを筆頭に、ネズミに似た哺乳類や貝類、5種にも及ぶゴキブリや最古級のスッポンなど貴重な化石が次々と発掘されている。
恐竜たちは、その多くがボーンベッド層と呼ばれる地層で集中して見つかっている。1億2000万年もの間、彼らが時を過ごした現場をわずか数メートルの至近距離で見られたことに興奮を隠せなかった。次の発掘計画も申請準備が進んでいるそうで、さらなる大発見を大いに期待したい。
産業用CTスキャナーを駆使して非破壊分析
発掘現場を後にした我々は、その成果が展示・収蔵されている博物館本館へと向かった。福井県で発掘された新種恐竜はもちろんのこと、国内外の恐竜骨格50点を中心に1000点を大きく超える標本が展示されている。その迫力は圧巻の一言。感動の展示を力説したい気持ちを抑え、ここからは福井県で行われている研究の最前線を紹介したい。
今井さんら福井県の恐竜研究者が近年力を入れているのが「デジタル古生物学」だ。化石の外観的特徴から比較・検討を進める従来のアプローチに加え、産業用CTスキャナーやCGなどのデジタルツールを駆使する手法で、世界中で行われている。例えばCTスキャナーの場合、従来は壊すことでしか調べられなかった化石の内部構造を、非破壊かつ容易に分析できるようになったという。
既にさまざまな成果が出ている。例えばフクイラプトルの場合、CTスキャンで成長線を測定したところ4歳程度の若い個体であることが昨年、分かった(フクイラプトルのようなアロサウルス類の寿命は22~28歳程度といわれている)。
高精度SPring-8で袋小路を突破
前述の成果は、兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」との共同研究で生まれたもの。もともと大学が所有していた一般的な産業用CTでは精度の問題で成長線の分析が困難だったところ、SPring-8が持つ高エネルギーエックス線CTスキャンの力で実現した。