これは、たしかに特定が難しい…不意をついてやってくる「火山で起こる津波」を起こす6つの要因と、あまりに「広範囲な影響」
ストロンボリ島で起きた津波
ストロンボリ火山(イタリア)は山頂で繰り返す爆発的噴火が象徴的だが、実は津波のリスクも抱えている。2002年12月30日、噴火により西側斜面に流出していた溶岩流が斜面の一部とともに突如として崩落し、およそ300万m³の火砕物が一気に海に流入した。 これにより発生した津波はストロンボリ島を取り巻くように伝搬し、北東部の集落では最大11mまで遡上した。数名の観光客が怪我をした程度ですんだが、道路や家屋、船舶への被害が生じるなど、この島での津波の脅威があらわになった。またこの津波は約40km離れたリパリ島を含めた周辺の島々でも観測され、人々を驚かせた。 溶岩が流出し、崩落したストロンボリ島の西側斜面は約36度の安息角に近い傾斜を有し、Sciare del Fuocoと呼ばれている。英語に直訳するとSki of Fireだ。2002年のイベントはまさにこの斜面の名前を象徴するものだった。この斜面ではさらに大規模な崩落イベントが過去に繰り返し発生している。このような現象に起因する火山性津波のリスクは、ストロンボリ島だけでなく周辺のエオリア諸島の島々にも存在している。
海底での崩壊に伴う津波
海底での山体(斜面)崩壊は、陸上の山体崩壊と類似の現象だが、津波発生のメカニズムはやや異なる。 陸上の場合は崩壊物(土砂)の海への流入が主に津波の発生に寄与するが、海底で崩壊が起こる場合、崩壊物の移動・堆積による地形変化(水深の減少)と、崩壊による給源での地形変化(水深の増加)がほぼ同時に起こることで津波が励起される(図「海底での崩壊」)。給源での地形変化はカルデラ陥没に類似し、短時間で大きな水深の変化を伴うものになる。 崩壊現象の全てが水中で起こるため、その全体像の把握は容易ではない。噴火・崩壊に伴う地震や津波の検知、崩壊前後の正確な地形データの取得によって、何が起きたのかがはじめて特定されることになる。深海であれば発生の検知はより難しくなるだろう。 このような現象の報告事例は少ない。2023年10月に伊豆諸島の孀婦岩近海で発生した地震・津波イベントでは、深海底での大きな地形変化が伴われたようだ。もしかしたらここで述べたようなプロセスが関係している可能性もある。さらなる調査観測が行われ、このタイプの崩壊やそれに伴う津波の理解が進むことが期待される。
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