これは、たしかに特定が難しい…不意をついてやってくる「火山で起こる津波」を起こす6つの要因と、あまりに「広範囲な影響」
新たな火山島の出現は、島のでき方、地球の活動を知る研究材料の宝庫です。そこには、ほかでは見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。 【画像】山体崩壊のよる津波で大きな被害を出した島「渡島大島」がこちらです 2024年9月、伊豆諸島、小笠原諸島に津波注意報が出され、一時は騒然となりました。実際、伊豆諸島では、八丈島での80センチメートルをはじめ、各島で津波が観測されました。とつぜん海の向こうからやってくる津波は、どのようにして起こるのでしょうか。 国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』。火山活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査を行い、海域火山の研究を続けてきた著者が、津波の起こるメカニズムについて解説します。 ※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。
じつは、いくつもある火山活動に伴う津波事例
これまでの記事でも、火山活動に伴い発生する津波の事例をいくつか紹介してきたが、発生要因としては既存地形を大きく変化させる現象か、水面を直接大きく変動させる現象に大別でき、以下のように複数挙げられる。 陸上での山体崩壊に伴う岩屑なだれ、溶岩ドームの崩落や爆発的噴火に伴う火砕流など「火山性流れ」の海への流入海底での山体(斜面)崩壊海底でのカルデラ陥没など断層運動による急激な沈降断層運動による隆起マグマ水蒸気爆発爆発的噴火により発生する大気波動 このうち地形を変化させる現象としては1~4が、水面を直接変動させる主な現象としては5、6が該当する。
火山性流れの海への流入による津波
岩屑なだれや火砕流により短時間のうちに大量の物質が海に流れ込むことにより、海水が急激に押し上げられ津波が発生する(図「火山性流れの水域への流入」)。火山島での大規模な噴火に伴う火砕流や山体崩壊により発生した事例がよく知られている。 また、2022年1月のフンガ火山(トンガ)の大規模噴火の際には、巨大噴煙が部分的に崩壊して火砕流が発生し、大量の物質が海に流入して周囲の海底地形が大きく変わってしまった。周辺の島々(近地)は大津波に襲われたが、その一部は海に流入した大規模な火砕流に起因した可能性がある。 これらの現象は未然に検知することが難しい場合が多く、火山周辺の沿岸域では甚大な災害に発展することが多い。水槽実験や数値計算にもとづくと、流れ込む物質の流入率が津波の波高を決める要因として重要になる。
【関連記事】
- 【続き…津波被害の実例を見る】「日本海の孤島・渡島大島」の噴火…「降灰まみれの悲劇」に見舞われた松前を、さらに襲った10m超の「大津波」の正体
- 【記事中のクラカタウ火山はこちら】明治日本をも震撼させた…噴火で消滅した後に現れた「子供島」の成長と、その後の姿
- 【富士山も山体崩壊を起こしていた】今年で316年、宝永からマグマを溜め続けた富士山…次の大規模噴火は「これまでにないステージの始まり」となるか
- 地球の地殻「海と大陸」どちらが先にできたのか…じつは「水の果たした大きな役割」を考えれば、おのずと見えてくる「地球形成のシナリオ」
- なんと、あの「大陸移動説のウェゲナー」はじめは「まったく相手にされなかった」…証拠となったのは「海洋の黒い石」玄武岩