「サッカー続けたいけどチーム選びで悩んでいる子はいませんか?」中体連に参加するクラブチーム・ソルシエロFCの価値ある挑戦
「中学生になるとサッカーをやめる子が多い」。日本のサッカー界が抱える大きな問題の一つだ。さまざまな理由が考えられるなかで、原因の一つとして挙げられるのが「環境」だろう。クラブチームに入れば金銭的負担や学業との両立がネックとなる一方で、近年は部活動の情勢も厳しい。多忙を極める学校教員が部活指導に時間を割くのが難しく、また部員不足により選手が11人揃わないサッカー部が増加している実情もある。課題を解決するべく部活動の地域移行が推進され、日本中学校体育連盟が主催大会の参加資格をクラブチームまで拡大。そこで早速、東京都で初めて中体連のサッカー大会に参戦したのが、葛飾区で活動するソルシエロFCだ。今年4月にジュニアユースを立ち上げたばかりの新興チームは、なぜ対極にいた部活動に新風を吹き込んだのか。風穴を開けたクラブ代表の木村正人監督に中体連加盟の理由を聞くと、サッカーにおけるグラスルーツ(草の根)はどうあるべきなのか、その本質が見えてきた。 (文・撮影=志水麗鑑、トップ写真提供=ソルシエロFC)
ジュニアユース発足に踏ん切りがつかなかった理由
「こんなにもサッカーをやめる子が出てしまっているのか」 悲痛な叫びは、ジュニア(小学生)年代の指導者間でも漏れ伝わってくる。 2011年にソルシエロFCを発足させた木村監督は、長らくジュニア年代の指導にあたりながらも、日増しに悶々とした思いが強くなっていた。 「ジュニアの卒業生の進路は大きく分けてクラブチームか部活になりますが、サッカーをやめてしまう子もいることが気になっていたんです。6年と長いジュニア期では習熟度に差があるなかで、早期熟成型で意志の強い子はクラブチームに挑戦しますが、上達スピードがゆっくりの子、もしくは小学校5年生や6年生からボールを蹴り始めた子は、中学生になってもサッカーを続けようかどうか悩むようです。それでも今までは部活で楽しくサッカーしていましたが、部活の状況が厳しくなった最近はサッカーをやめる子もいて……。サッカーを教えきれたのか、伝えきれたのか、とずっと悶々としていました」 他クラブの指導者仲間にも悩みを打ち明けたら共感を呼んだ。見えてきた傾向は、中学生でサッカーをやめる子はジュニア期に試合出場機会が少ない選手。「育成して救ってあげたい。諦めないでサッカーしよう」という思いがあったが、中学生年代のクラブチームであるジュニアユースの発足になかなか踏ん切りがつかなかった。 木村監督はこのようにジュニアユース立ち上げを迷った理由を明かす。 「ジュニアユースを発足させたくても、クラブユース連盟は敷居が高いんです。公式戦における移動の負担が大きすぎる。会場が西の果てから東の果てまで広範囲で点在しているので、クラブチームに進んだジュニアクラス卒業生の親にリアルな声を聞けば、一例を挙げると朝は5時起きで帰宅は19時頃とかもあると。しかも、試合には少しだけでも出られるかどうかで、なのに交通費は月に2万円から3万円ほどは覚悟しなければならない。そもそも、もともとサッカーはボールさえあればどこでもプレーできるスポーツで、人生はサッカーだけがすべてではないのに、移動に時間が割かれてあまり勉強ができず、経済的にも負担がかかってしまうのは、いかがなものなのかなと」