「就職氷河期世代」はどう語られてきたのか?90年代にはフリーター増や高離職率から<若者の意識変化が原因>とも見られていたが…
1990年代半ばから2000年代初頭に就職活動をした「就職氷河期世代」は、2024年時点で30代の終わりから50代前半にあたります。今も多くの問題を抱えており、厚生労働省が様々な支援を続けています。このような状況のなか、労働経済学を専門とする近藤絢子教授は「コロナ禍の経済活動への影響が落ち着いた今、改めて就職氷河期世代に目を向けなおすべき」と語っていて――。そこで今回は、近藤教授の著書『就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』から一部引用、再編集してお届けします。 【書影】データから見える現実、講じ得る支援策とは?近藤絢子『就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』 * * * * * * * ◆就職氷河期世代観の変遷 就職氷河期世代がこれまでどのように語られてきたかを振り返ってみたい。 「就職氷河期」という言葉がメディアに登場してから四半世紀の間に、この世代に対するイメージはどのように変わってきたのだろうか。 新規学卒者の就職率は1993年以降急速に落ち込んだ。その結果、90年代半ばにはすでに、学校を卒業しても正社員の仕事に就かずアルバイトで生活する、いわゆる「フリーター」の増加が社会問題となりつつあった。 それと同時に、就職難にもかかわらず、せっかく就いた仕事をすぐにやめてしまう若者の増加も問題となっていた。 この離職率の高さのせいか、1990年代のうちは、若者の失業や非正規雇用の増加の原因を、若者の意識の変化に求める見方が多かったように思う。
◆2000年当時の見方 これを端的に示すのが、平成12年(2000年)の労働経済白書の、若年雇用問題に関する記述だろう。 この白書には「高齢社会の下での若年と中高年のベストミックス」というサブタイトルがついており、若年者の雇用・失業問題に1章が割かれている。 この章では、フリーターの増加や離職率の上昇の原因として、景気の低迷による労働需要の減少と並べて、「職業に対する目的意識の希薄化」「(親の世代の)経済的な豊かさ」を挙げている。 若者の就業意識の変化として、仕事に対し具体的な希望のない高校生が増えていることや、そもそも正社員としての就職活動をしない大学生が相当数いること、フリーターを会社にとらわれない自由な働き方として肯定的にとらえる若者が増えている、といった記述が続く。 そして裕福な親の存在によって生活が守られているので、正社員として就業しなくても生活できてしまうことが背景として指摘される。 フリーターになるのも、就職したあとすぐに離職するのも、若者自身の意思による自発的な選択だという見方だ。
【関連記事】
- 日本の6分の1にあたる「就職氷河期世代」。バブル期の売り手市場との落差が語られがちだが、特に<99年3月卒業生>以降の就職率や求人倍率は…
- 青木さやか「誰でも就職できる会社」まで落ちた就職氷河期を経てタレントになって。「どこ見てんのよ!」は女性をウリにするのが当たり前だった時代に生まれた<心の叫び>
- 速水健朗 バブル時代、庶民は浮かれるどころか「マイホームを夢見るのも許されない」状況に憤慨した。「持つ者」をより肥えさせた<リクルート事件>の発端から決着まで
- 不妊治療に経済的不安を抱える年収450万円・33歳の電車運転士「リーマン氷河期世代も気にかけてほしい。社会に出た時期や世代で苦労するのは納得いかない」
- 就職氷河期世代の息子は契約社員で昼夜逆転。脛をかじられ続ける夫は、ゆるい生活が気に入らずイライラを募らせる…