「就職氷河期世代」はどう語られてきたのか?90年代にはフリーター増や高離職率から<若者の意識変化が原因>とも見られていたが…
◆政策課題として注目されるように しかし2000年代に入り、ますます雇用情勢が厳しくなると、若者は自ら望んでフリーターになっているわけではない、問題は良好な雇用機会の減少にある、という見方が優勢になってくる。 離職率の高さも、若者の側の就業意識の低下というより、やりがいや希望を持って続けられる仕事や成長の機会を与えてくれる仕事が減ってしまった結果であることが経済学者によって指摘された(黒澤・玄田2001)。 2003年には省庁横断的な若者政策「若者自立・挑戦プラン」が策定されるなど、若年雇用問題は政策課題としても注目されるようになってきた。 学生でもなく求職活動もしていない無業の若者を指す「ニート」という言葉が広く知られるようになったのもこのころである。 2006年からは若年無業者の自立をサポートする地域若者サポートステーション(サポステ)も各地に設置されるようになった。
◆長期的に不利な立場 そして、2000年代半ばの「景気回復期」(実際には新卒採用市場はそこまで回復していなかったのだが)に入り、この景気回復から取り残された世代として就職氷河期世代が取り上げられるようになってきた。 例えば2008年に、総合研究開発機構(NIRA)が「就職氷河期世代のきわどさ」という研究報告書を出している。「ロストジェネレーション」「ロスジェネ」という言葉が使われだしたのもこのころだ。 2000年代末には、この世代が長期的に不利な立場に置かれ続けていること、このまま何もしなければより問題は深刻化していくであろうことが、すでに指摘されていたのだ。 当時、氷河期前期に大学を卒業した世代は30代後半に差し掛かっており、サポステなどの若年支援事業の上限年齢を35歳から39歳に引き上げる動きが見られた。 おりしも、2008年秋のリーマンショックに始まる世界同時恐慌の影響で、アルバイトや派遣社員の雇止めが急増し、社会問題となっていた。
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