ノーベル賞「生理学・医学賞」2015年の受賞は? 日本科学未来館が予想
2015年のノーベル賞の発表が近づいてきました。10月5日の生理学・医学賞を皮切りに物理学賞(6日)、化学賞(7日)の順に自然科学3賞が発表され、平和賞(9日)、経済学賞(12日)と続きます。昨年は赤崎勇、天野浩、中村修二の3氏が物理学賞を受賞し、日本中が沸きました。 【アーカイブ動画】ノーベル医学生理学賞の大村智氏が北里大学で会見 今年はどんな研究をした、どんな科学者に贈られるのでしょうか。日本人受賞者は今年も誕生するのでしょうか。日本科学未来館は自然科学系3賞の受賞者を予想しています。同館の科学コミュニケーターが注目する研究を、ここ数年の受賞分野の傾向と合わせて紹介します。
《生理学・医学賞》
生理学・医学賞は、「病気の解明や治療法の開発」、「生命研究に欠かせない技術開発」、「生命の基礎メカニズム」といった生命に関するテーマが毎年受賞しています。
免疫が十分に働けるようにしてがん治療
■免疫制御分子の発見とがん治療への応用=ジェームズ・アリソン(James P Allison)博士/本庶佑(ほんじょ・たすく)博士
私たちの体にはウイルスなどの外敵や、がん化した細胞を異物として排除する「免疫系」というシステムが備わっています。 がん細胞への免疫反応とはどのようなものでしょうか。免疫反応では、まず、体内に異物がいることを認識するところから始まります。その最初のステップを担うのは、白血球の仲間である「樹状細胞」。その名の通り、枝をいっぱい出した樹状細胞が異物をとらえ、その異物の一部をリンパ球の一種である「ヘルパーT細胞」に知らせます。ヘルパーT細胞はリンパ球の一種で “免疫系の司令塔”と呼ばれています。 樹状細胞がヘルパーT細胞にがん細胞の存在を知らせる最初のプロセスでは、この2つの細胞が握手をすることで行われます。これを合図に、ヘルパーT細胞は活性化して戦闘態勢になり、実働部隊に攻撃を指示する物質を出します。こうして、がん細胞への攻撃が始まります。
一方で、私たちの体には、活性化したT細胞を抑える仕組みもあります。いつまでも戦闘態勢だと、自分の健康な細胞も攻撃しかねず、危険だからです。がん細胞がときに免疫の攻撃を逃れて増えてしまうのは、この抑える仕組みが働き過ぎていることが一因です。 アリソン博士や本庶博士は、こうしたT細胞を抑える仕組みを調べました。抑える方法がわかれば、それを外すことでT細胞が存分に働けるようになり、がん細胞を排除できるようになるかもしれません。