ノーベル賞「生理学・医学賞」2015年の受賞は? 日本科学未来館が予想
タンパク質をリサイクル
■オートファジーの分子メカニズムの研究=大隅良典(おおすみ よしのり)博士
私たちの体をつくるタンパク質は、日々新しく作り替えられています。その材料は食事からも得ますが、体内の古くなったタンパク質をリサイクルする量の方が多いのです。 細胞の中でこのリサイクルを行っているのがオートファジーという仕組みです。 タンパク質を分解する方法には、古くなったタンパク質を選んで処理する方法と、選ばずに丸ごと処理する方法の二つがあります。オートファジーは選ばずに処理する方法です。細胞の中に二重の膜が現れて、細胞内の一部を丸ごと囲みます。膜が口を閉じて完全に包み込むと分解酵素をもつリソソームがくっついて、膜の中のタンパク質が全て分解されます。
タンパク質のリサイクルは、私たちの体を常にフレッシュに保つのに欠かせない仕組みです。大隅博士は酵母を使ってオートファジーにどんな遺伝子が関わっているのかを特定しました。その後、ヒトを含むほ乳類にも同じような遺伝子が存在することがわかり、そのおかげで生命現象の基礎ともいえるオートファジーの研究が飛躍的に進みました。今ではパーキンソン病や腫瘍形成などの病気との関連も調べられています。 ◎予想=科学コミュニケーター・志水正敏
生理学・医学賞の発表は10月5日夕方
ノーベル生理学・医学賞は10月5日午後6時半(日本時間)から発表されます。今回紹介した3つの研究については、日本科学未来館の「科学コミュニケーターブログ」でより詳しく解説しています。予想が当たっても当たらなくても、これを機会にご紹介した研究・研究者にも興味を持っていただけたらと思います。 ◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 高橋麻美(たかはし・あさみ) 1988年、愛知県生まれ。磯遊びとダイビングが趣味で、生物を使った科学コミュニケーションが得意。琉球大学大学院理工学研究科を修了後、2013年より現職。