J再開待つ53歳の三浦”カズ”が語った…新型コロナ不安と覚悟「無観客でも一人カズダンスをやりたい」
50歳になった直後の2017年3月のザスパクサツ群馬戦で決めた一発を最後に、リーグ戦を含めた公式戦でゴールを決めていない。昨シーズンのリーグ戦出場はわずか3試合。下平体制下では2位に食い込み、J1への自動昇格を決めた愛媛FCとの最終節の残り3分からピッチに立っただけだった。 「どのような状況になっても、自分のなかで目標は変わらないですね。試合に出て勝利に貢献して、ゴールを決めて、アシストをすることを目指していきたい」 過密日程や高温多湿の悪条件が待つ過酷な状況を、カズはポジティブな思考回路を作動させることでチャンスへと変換している。ひたむきに努力を積み重ねる真摯な姿を介して、若手を含めた他の選手たちに「他のマネジメントがいらないぐらいに、一番いい影響を与える」と目を細めたこともある下平監督は、自身が年下ゆえにどうしても「さん」をつけて呼ぶカズへ、こんな言葉を残している。 「個人的にはJ1で得点を取ってほしい。起用するのは僕なんですけど、J1の舞台に立てるようにカズさん自身も準備をしているし、53歳で決める得点を世間のみなさまも楽しみにしていると思うので」 日本を取り巻く状況は9年前と酷似している。東日本大震災が発生した直後の2011年3月29日。長居スタジアムで行われた日本代表とJリーグ選抜によるチャリティーマッチで、誰よりも眩いスポットライトを浴びたのがカズだった。2点ビハインドから一矢を報いるファインゴールを決め、ゴール裏のスタンド前で十八番のダンスを舞う。試合後に発したこの言葉で日本中を感動させた。 「ちょっと迷いましたけど、気分が暗くなってはいけないと思って。ゴールもそうですけど、ゴールを決めた後のダンスを介して、微力ながら日本中を明るくできたらいいな、と」 依然として新型コロナウイルス禍が続くいま、13年ぶりにJ1のピッチに立ったカズが、ジーコがもつ41歳3カ月12日のJ1最年長記録を26年ぶりに、しかも大幅に更新する歴史的なゴールを決めれば――未踏の領域を走り続けるキングに、日本は再び勇気づけられる。 「たとえ無観客試合であっても、ゴールしたら『カズダンス』をやりたい。チームメイトのみんなと喜び合うこともできないかもしれないけど、そのときは『一人カズダンス』で盛り上げます」 歓喜に包まれるゴールセレブレーションも当面禁止される、再開後のピッチを思い浮かべたのか。照れ笑いを浮かべたカズは、不本意な数字に終わった練習再開初日のフィジカルテストに「試合に出られるように、もう少し頑張っていかないと」と自らを鼓舞することも忘れなかった。 (文責・藤江直人/スポーツライター)