J再開待つ53歳の三浦”カズ”が語った…新型コロナ不安と覚悟「無観客でも一人カズダンスをやりたい」
約2カ月ぶりに味わう芝生の感触が心地よく、そして懐かしかった。新型コロナウイルスの影響を受けて、4月7日から活動を休止していた横浜FCが3日から練習を再開。53歳の現役最年長選手、FW三浦知良もフィジカルテストを中心とした約1時間の非公開練習を元気に消化した。 「2つのグループに分かれての練習でしたけど、久しぶりにみんなで芝生のグラウンドの上に集まり、練習できたことが嬉しいですね。まず第一歩を踏み出せたかな、と思います」 終了後にオンライン形式で取材対応したカズは、口ひげとあごひげをたくわえ、ちょっぴりワイルドさを増した表情を何度も綻ばせながら、7月4日に決まったJ1リーグの再開を見すえた。 53歳になる前日の2月25日に決まった公式戦の中断は、3度定められては見送られてきた再開目標をへて、最終的には4カ月あまりにまで延びる。日本の元号が昭和だった1986年にブラジルでプロになり、プロ時代の先駆者として平成を駆け抜け、令和になって実に13年ぶりにJ1の舞台へ戻ってきた35年目の大ベテランにとっても、自宅待機を余儀なくされた約2カ月間は未知の世界だった。 「いろいろなことが世の中で起こったなかで、僕自身もさまざまな葛藤がありました。自分が感染しているんじゃないか、感染させてしまうんじゃないかという不安もありました。サッカーができない状況が一番のストレスになるなかで、いつかはJリーグが再開される、そのときにはベストの状態で臨みたいと思いながらトレーニングすることで、自分自身を落ち着かせてきました」
降格無しルールと交代枠増に出場チャンス
再開後も昨シーズンまでとは様相が異なる戦いが待つ。週に2試合、水曜日と土曜日に公式戦が組まれる過密日程のなかで、心身を摩耗させる高温多湿の酷夏とも戦わなければならない。国際サッカー連盟が承認している、交代枠を期間限定で「3」から「5」に増やす特別ルールを採用する予定のJリーグは、同時に今シーズンに限ってはカテゴリー間の「昇格あり、降格なし」も決めている。 2007シーズンに続く2度目のJ1に挑んでいる横浜FCは、図らずもクラブ史上で初めて残留が決まったことになる。それでも、今シーズンの始動時に掲げた、10位以内という目標を引き続き追い求める下平隆宏監督は、すでに交代枠が増えたなかでの戦い方をあれこれと思い描いている。 「ウチは選手層が厚いので、交代枠が増えたなかでいろいろなタイプの選手を起用できる。過密日程になるなかで非常にありがたいことだし、上手く活用していきたいと思っています」 いろいろなタイプのなかにカズも含まれる。シーズン始動時に左臀部を痛めた関係で、中断前に行われたYBCルヴァンカップのグループリーグ初戦と、古巣ヴィッセル神戸とのJ1リーグ開幕戦はベンチ入りしなかった。しかし、予期せぬ長期中断の間にけがは完治している。 今シーズンは慣れ親しんだ最前線ではなく、下平監督が掲げる[4-2-3-1]システムのなかでトップ下が主戦場となる。黄金の左足をもつ41歳の元日本代表・中村俊輔、柏レイソル時代にMVPに輝いた36歳のレアンドロ・ドミンゲス、アカデミー出身の22歳のホープ・齋藤功佑らとポジションを争うなかで、昨年5月から横浜FCを率いる48歳の指揮官とカズは思いをシンクロさせている。 「僕たち選手がやるべきことは変わらないけど、降格がないなかで監督は思い切った采配で、いろいろな選手を使う状況が増えてくると思うので。短期間で連戦が続いていく日程も含めて、選手たちにとっては(試合に出場できる)チャンスが膨らんでくるんじゃないかと考えています」