テレビは嘘をついたら絶対に駄目――黒柳徹子が芸能生活70年で気づいたこと #昭和98年
黒柳にはテレビの司会者として大切にしているいくつかの信条がある。その一つは、「玉ねぎ」形のヘアスタイルにも関わっている。 「司会者は斜めや後ろから映される時が多いでしょ。どなたかのお話を聞いている時、首に髪の毛が垂れていると首の動きが見えづらくて、話にうなずいているのかどうか、よく分からない。でも、私の玉ねぎ頭なら、首が全部出ているから邪魔にならないでしょ? 相手に賛同しているのかいないのか、はっきりしておきたいじゃないですか」 1978年から約12年間放送された音楽番組『ザ・ベストテン』(TBS)は、「絶対にチャートを操作しないこと」を、『徹子の部屋』は「生放送と同じように収録し、極力編集しないこと」を条件にオファーを引き受けた。 「私が70年かけて発見したことは、『テレビは嘘をついたら絶対に駄目』ということ。お客さま(視聴者)というのはテレビの嘘を絶対に見抜くと私は思う。ですから自分の番組で嘘があったら困りますし、私自身も正直にやっています」
世の中は不公平。どんなに泣いても人は死ぬもの
黒柳は1984年以降、ユニセフ(国連児童基金)の親善大使を務めている。これまでにのべ39カ国を訪問し、自ら開設した募金口座を通じ、のべ44万人から寄せられた65億円(2023年10月末まで)の募金を寄付してきた。 「親善大使になっていなければ、もっと気楽な人生だったのかもしれませんね。飢えたり死にかけたりしている子どもたちの姿をたくさん見てきました」 とりわけ1986年にインドを訪れた際の出来事は、今も忘れられない。 「貧しい地域の病院で、破傷風で死にかけていた子どもたちに会いました。私が10歳くらいの子に、『お医者さんも一生懸命やっていらっしゃる。生きようと思って頑張るのよ』と言葉をかけました。そうしたらその子は、もう満足に声が出ない状態なのに『あなたの幸せを祈っています』と私に言ったんです」 「もし予防接種が1本あれば、その子は死なずに済んだかもしれない。そう考えた時、ユニセフの仕事を続けていこうと思いました。誰だってご飯が3回ぐらい食べられて、病気にならないで、家族と一緒にいられたらそれが一番いいはず。今も、ニュースでガザの子どもたちの様子が流れると、つらくてたまりません。『神様、ちょっと不公平なんじゃありません?』と心の底から言いたくなります」