名古屋で「表現の不自由展」作品再展示、緊張の中で始まる
2019年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で話題となった企画展「表現の不自由展・その後」。その作品を再展示する美術展が6日、名古屋市中区の市民ギャラリー栄で始まった。11日までの開催予定だが、会場周辺で展示に反発する人たちの抗議活動が繰り広げられているほか、9日から反対派の展示会も同フロアで予定されているなど、緊張した空気に包まれている。
整理券配布に列、韓国メディアも取材に
会場は中区役所のあるビルの8階フロアの展示室。この日は朝に報道関係者向けの内覧会が開かれた後、午前9時半からビルの地下1階で整理券の配布が始まり、午前10時から各回定員50人、上限時間50分の入れ替え制で一般の入場が始まった。入場を待つ人の列ができたほか、韓国のテレビ局が取材に訪れるなど、東京や大阪で同様の展示が実現しない中、関心の高さがうかがえた。 展示室中央には、日韓の慰安婦問題を象徴する「平和の少女像」を展示。木製のイスが2つ並べられ、隣に座ることができる。 壁際には、昭和天皇をモチーフにしたコラージュ作品「遠近を抱えてPart 1」と天皇の肖像写真を燃やすシーンが含まれる映像作品の「遠近を抱えてPart 2」が並べられ、「重重―中国に残された朝鮮人日本軍『慰安婦』の女性たち―」の写真作品も飾られた。 別の展示室では、トリエンナーレ以降の市民運動の記録を写真や映像で紹介。署名偽造が事件化した愛知県の大村秀章知事に対するリコール(解職請求)運動に反対してきた活動の記録もある。
反対派は開場後、抗議活動の準備も
主催する「『表現の不自由展・その後』をつなげる愛知の会」の高橋良平さんは「トリエンナーレ以来、暴力によって否定され続けている表現の自由や歴史の事実を取り戻すためのささやかな試み。まずは最初からあまりイメージせずに気軽に見てほしい。関係各所と協議しながら安全を確保し、最後まで開催したい」と話していた。 開場後、場内の一部で「こんなもの見たくない!」といった怒号が飛び交ったりもしたが、会場周辺では開場から1時間ほどは目立った動きはなかった。しかし、プラカードや日の丸の旗を手に抗議活動を準備する人たちの姿は散見され、今後、街宣車などの巡回も予定されているとして、警察官らが警備に当たっていた。 (関口威人/nameken)