いまなお物議の「表現の不自由展」 名古屋では「アンチ展示会」と対面開催で波乱?
2019年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で、慰安婦問題や昭和天皇をモチーフにした作品などに抗議が殺到したり、脅迫騒ぎがあったりした企画展「表現の不自由展・その後」。あれから2年近くたった今、作品の再展示をめぐって再び各地で議論が巻き起こっている。 今年6月に東京・新宿区で予定されていた「表現の不自由展・東京展」は、会場となる予定だった民間のギャラリー近くで開催反対の激しい街宣活動が行われたことなどで、延期状態に。また、大阪では7月に、大阪市内の府立施設で「表現の不自由展かんさい」というタイトルの展示会が予定されていたが、やはり抗議活動が相次ぎ、安全確保が困難との理由で一度は承認された利用が取り消されてしまい、主催者側が提訴する事態に発展している。 こうした中、名古屋市では7月6日から、名古屋市営のギャラリーで有志による「私たちの『表現の不自由展・その後』」が、そして、その3日後から同じギャラリー内でこれに反発する団体の展示会「あいちトリカエナハーレ2021」が開かれる予定だ。東京・大阪とは少し異なった名古屋の状況を紹介するとともに、「表現の不自由展」をめぐる現状について専門家の意見も聞いた。
市民有志が「直接見たい」と企画
2つの展示が行われるのは、名古屋市中心部の中区役所ビル内にある「名古屋市民ギャラリー栄」。6~11日に「私たちの『表現の不自由展・その後』」、9~11日に「あいちトリカエナハーレ2021」が開かれる予定となっている。 前者は市民有志の「『表現の不自由展・その後』をつなげる愛知の会」が主催する。トリエンナーレに出品した表現の不自由展実行委員会のメンバーに協力を求め、「平和の少女像」「遠近を抱えてPart2」「重重―中国に残された朝鮮人日本軍『慰安婦』の女性たち―」のほか、写真作品や市民運動の記録などを140平方メートルほどの部屋に展示する。開催に必要な資金は、クラウドファンディングで集めたという。 主催者の一人は「トリエンナーレでは多くの人が作品を直接見られなかった。市民の手で、もう一度見る機会を作ろうと昨年も展示を企画したが、コロナ禍で延期となり、今回は東京や大阪でもやるということでこのタイミングになった」と開催までの経緯を説明。そのうえで「作品の感じ方は人それぞれ。まずは実際に見たり、触れたりする機会を保障する社会になってほしい」と、展示を実現することによる問題提起を強調した。