レッドブルとともに再び、F1グランプリの頂点へ【ホンダF1挑戦60年の軌跡⑦】
一時はユーザーチームを失いかねない深刻な事態に
2024年8月2日、ホンダは1964年8月2日に行われたドイツGPでのF1初参戦から60年を迎えたが、その中でも2015年からの第4期はとくに困難な挑戦だった。メルセデスを頂点とする欧州勢の圧倒的な強さの前に、ホンダは屈辱的な敗退を繰り返した。それでも自らの技術への信念が揺らぐことはなく、レッドブルとともにホンダはついに再びF1の頂点に立つのだった。 【写真はこちら】 2021年、自身初のドライバーズチャンピオン獲得を果たしたマックス・フェルスタッペン。(全3枚)
撤退を発表した2008年12月から3年半、ホンダの事業業績は順調に推移し、ホンダのハイブリッド車の世界累計販売台数が、2011年12月末時点で80万台を超え、また日本国内では、2011年12月度のホンダ登録車におけるハイブリッド車比率が45%を超えていた。環境問題への意識が世界的に高まる中、F1は熱エネルギー回生システムを用いたV6ターボハイブリッドのパワーユニットが2014年から導入されることが決定。これを受けてホンダは、2012年の夏から、新時代へと舵を切ったF1復帰の検討を始めていた。 途中からフルワークス参戦となった第3期には、年間数百億円といわれるほど莫大な経費がかかっていたこともあって、2015年に再びF1に復帰するにあたってはマクラーレンとタッグを組んで挑戦することになった。 第2期の大成功もあり、この挑戦は世界的に大きな注目を集めたが、成績はさっぱり。パワー不足は深刻で、3年目の2017年になっても飛躍のきっかけを見つけることはできず、マクラーレンとの関係は悪化、かつての黄金時代の再現を果たせぬままマクラーレンとのコンビはこの年限りとなった。 このままではパワーユニットの供給先がなくなるという屈辱的な事態となったが、これを救ったのはトロロッソだった。ホンダも航空機部門も含む全社をあげた必勝体制でのぞんだ。 トロロッソ・ホンダの初年2018年は、ルノー製パワーユニット搭載を前提に設計した車体だったこともあり選手権9位に終わったが、ホンダ製パワーユニットの着実な進化をレッドブルグループが認め、翌年からのレッドブルグループ2チームへの供給へとつながっていった。 そして2019年6月の第9戦オーストリアGPで、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが激戦を制して優勝。ホンダにとっては、第4期初勝利となった。表彰台に立ったフェルスタッペンは、満面の笑みで胸の「Hマーク」を指した。 しかし2014年以来王者に君臨するメルセデスの壁は高く、2019年、そして新型コロナの感染拡大で混乱した2020年も王座奪還はならなかった。しかも2020年10月、メルセデスと激しいチャンピオン争いを繰り広げる最中、ホンダは「カーボンニュートラル実現に向けて経営資源を集中する」ため2021年シーズン限りで第4期F1活動終了を発表。2021年はホンダにとって、念願のタイトル獲得に挑むラストチャンスとなった。