フードエッセイスト平野紗季子「たこやきって、出汁のシュークリームなのかも」味の記憶にラベルを貼っていくこと
一人で食事をすると、食への解像度が上がる
――「ひとり食べ」が好きだと公言されていますが、チェーン店から予約の取れない名店までさまざまなお店に足を運んでいらっしゃいますね。 平野さん:流行っているとか、予約が取れないとか、外からの評価はあまり関係なくって、自分が食べたいかどうかを大切にしています。コンビニのごはんに癒される日も、レストランの職人技に刮目する日も等しく愛おしい。今日もこの取材場所に来るまでの道すがら「モスバーガー」を食べたいという気持ちでいっぱいで。取材が終わったら真っ先にモスバーガーに寄って「海鮮かきあげバーガー」を食べてから帰るかもしれません(笑)。 一人での食事の場合、料理の物語にどっぷりと浸れるのもうれしいです。二度とない今を逃すものか、と真剣勝負な気分になったりもします。もちろん何も考えずに、ただただ癒される食事も好きなんですけどね。 一人でお店に行くのが苦手な方は、思い切ってカウンター席に座るのがいいですよ。そこでシェフの行動をずっと観察するんです。「あ、卵を割ったぞ」「肉の上下を返すぞ」みたいに頭の中で実況中継をしていると、手持ち無沙汰にならないですし、食べものがより一層おいしく感じられます。 平野紗季子 フードエッセイスト、フードディレクター。小学生から食日記をつけ続け、大学在学中に日々の食生活を綴ったブログが話題となり文筆活動をスタート。雑誌・文芸誌等で多数連載を持つほか、ラジオ/podcast番組「味な副音声」(J-WAVE)のパーソナリティや菓子ブランド「(NO) RAISIN SANDWICH」の代表を務めるなど、食を中心とした活動は多岐にわたる。著書に『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)、『味な店 完全版』(マガジンハウス)など。 撮影/中村力也 取材・文/高田真莉絵 構成/渋谷香菜子