ゴロゴロ野菜にファン急増!常識破りの冷凍宅配 急成長の秘密に迫る!
食品業界未経験3人の挑戦~創業3年で倒産危機
田邊は、大学からの友人の常務取締役・黒﨑廉と、「サイバーエージェント」時代の同期の執行役員・小池優利の二人を誘い、3人でGreenspoonを創業した。 この日は3人で、以前オフィスがあった北参道駅近くのレストラン「ル・キャレ」へ向かった。カウンターの横には、野菜を使った10種類以上の総菜が並ぶ。野菜たっぷりのメニューがこの店の売りだ。 実はここの料理が商品開発のヒントになった。 「こういう料理が電子レンジできたらいいなって構想していたお店です」(田邊) 田邊は大学卒業後、「サイバーエージェント」に入社し、ネットテレビや広告などに携わる。がむしゃらに与えられた仕事をこなしていったが、「なんかモヤモヤするし、幸せと言い切れない時があって。本当にやりたいと思えることができていなかった」と感じ、「本当にやりたい仕事をしたい」と28歳で退社。30歳でGreenspoonを立ち上げた。食品業界を選んだのは、「食べることが好き」と確信できたからだ。 まず考えたのは冷凍スムージーの宅配サービス。その人に必要な野菜が取れるパーソナルスムージーという商品を思いつく。 「パーソナルと言い切っていたので、1万種類作ろう、と」(田邊) 田邊たち3人は全国の食品工場に片っ端から電話をかけたが、種類が増えれば工場側の負担も増える。1社で作れるのは多くても数種類というのが常識だった。 100社近くに断られ、あきらめかけた時、熱意が通じて1社だけ「25種類なら作ってもいい」と言ってくれた。 「今考えたら25種類でもよく作っていただけたなと感じています」(田邊) こうして食品業界の常識にとらわれない新しい商品が生まれた。 宅配スムージーとしては異例の種類の豊富さが話題になる。例えばパイナップルやブロッコリー、枝豆などが入った「Let it be.」は体を鍛えたい人におすすめ、「Cheer up」は肌が気になる人向けで、ビタミン豊富なマンゴーやグレープフルーツ入り、という具合だ。続いてゴロゴロ野菜のスープシリーズを発売。売り上げは大きく伸びていく。 しかし、それも長くは続かなかった。創業3年目に入るとスムージーの売れ行きが頭打ちになり、さらに夏が近づくと温かいスープの注文が激減。売り上げは半分になり、倒産の危機が迫ってきた。 「お金が尽きるタイミングも残り2カ月だと、会社は潰れるって覚悟をして……」(田邊) 田邊はオフィスに入ろうとすると足がすくんで、家に引き返したこともあった。 「社員に対して申し訳ない気持ちもあったし、自分がこのサービスを一瞬疑ってしまう時もあって……」(田邊)