北海道新幹線「開業延期」で迷走する並行在来線 住民の意見を無視し、道はバス転換にこだわる
■並行在来線協議会が1年3カ月ぶりに再開 2030年度末に札幌延伸開業が予定されていた北海道新幹線がトンネル工事の遅れを理由に開業延期に追い込まれた。問題となったのは、長万部―倶知安間に建設中の羊蹄トンネル比羅夫工区で巨大な岩塊が出現したことにより工事が大幅に遅延していること。さらに、新小樽―札幌間を結ぶ札樽トンネルの工事では基準値を超えるヒ素や鉛などの重金属を含む残土処理の問題も表面化。2024年度から始まった作業員の残業規制強化や、北海道千歳市で建設が進む次世代半導体工場ラピダスの工事に関係した作業員不足なども問題も重なり、開業時期が見通せない状況となっている。 【多数の写真を一挙公開】南正時氏撮影、国鉄時代に北海道を駆け抜けた「急行列車」の記憶
そのような状況で、並行在来線後志ブロックの協議が中断したままの異常事態が続いていたが、2024年8月28日になって1年3カ月ぶりに協議会が開催された。 北海道新幹線の札幌延伸開業が「5年程度は遅れそうだ」ということは、すでに2022年頃から関係者の間で噂されていたことではあったが2024年5月8日、建設主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、鉄道・運輸機構)の藤田耕三理事長が「2030年度の札幌開業が困難である」と5月8日、斉藤鉄夫国土交通大臣に報告した。
これを受けて鈴木直道知事は、その後の記者会見の場で「なぜ、このタイミングで判断に至ったのかという理由、工期短縮するためのこれまでの取り組みや成果、開業延期の影響への対応など詳細について、丁寧に説明していただく必要がある」と遺憾の意を表明した。さらに、鈴木知事は北海道新幹線の札幌延伸については「道民の悲願」と強調。その後、5月14日になり国土交通省を訪問、斉藤大臣に早期開業を要望した。 5月29日には鉄道・運輸機構の藤田理事長が札幌市を訪問し鈴木知事や沿線自治体の首長らに謝罪し工事の状況を説明。鈴木知事を始め沿線自治体の首長らは鉄道・運輸機構に対して納得できないと言わんばかりに詰め寄り、八雲町の岩村克詔町長は「なんだ、日本の土木技術もたいしたことないな」と発言し物議をかもした。鈴木知事を始めとした北海道の首長らは、鉄道・運輸機構を一方的に批判するばかりで、いっしょに問題解決を図ろうとする姿勢は見られなかったのは残念だ。自然相手の長大トンネル工事は掘ってみなければわからない側面がある。