元女性の夫と元男性の妻 本来の「性」取り戻した性別逆転夫婦 最高裁「違憲」判断への思い #性のギモン
「講演後に『あなたたちの活動を知って生きる目的ができた』という長文メッセージをもらうこともあれば、YouTubeのコメント欄に『産んでくれた親に謝れ』というコメントを書かれることもある。ただ、アンチという存在も、僕らを通じてトランスジェンダーを知ってくれたわけだから、ウェルカムなんです。そこに活動の意味がある」(歩夢さん) 未悠さんはSNSでは「できるだけ日常をテーマに伝えること」を意識している。 「トランスの人たちは心の中に体とは違う性別を抱えているだけで、それ以外は変わりません。それが伝われば、無理解の壁が取っ払われていくのではないかなと。それと、私たちは互いの人格に惹かれて結婚をしたのであって、FtMとMtFという当事者同士だったから互いへの理解が早かったということは後付けの話で。『誰が誰を好きになってもいい』という言葉どおり、人として付き合うことに意味があるということを伝えていきたいです」
独身時代に「ストレートの男性よりも男らしく」「ストレートの女性よりも女らしく」という呪縛にとらわれていた二人は、互いの存在を通して「男らしさ」「女らしさ」からも脱却できた。先ごろは未悠さんの母親から「あんたたちは性別を超えた二人や。男女とかそういう概念を覆されたわ」と感心されたという。 いまはいかに自分らしく生きるか、個性をどのように表現するかが、人生のテーマ。そんな彼らの活動は、トランスジェンダーだけではなく、生きづらさを抱えるさまざまなマイノリティーの人たちへの指針と励ましになるだろう。 ---------- 堀 香織(ほり・かおる) フリーライター。大卒後、『SWITCH』編集部を経てフリー。『Forbes JAPAN』ほか、各媒体でインタビューを中心に執筆中。単行本のブックライティングとして、是枝裕和『映画を撮りながら考えたこと』、小山薫堂『妄想浪費』など。京都市在住。