元女性の夫と元男性の妻 本来の「性」取り戻した性別逆転夫婦 最高裁「違憲」判断への思い #性のギモン
手術は「私が死なずに生きられる唯一の方法だった」
2023年10月25日、最高裁大法廷は性同一性障害特例法の規定について「憲法違反」という判断を示した。同法が定める性別変更5要件のうち、(4)の生殖不能要件を「憲法が保障する意思に反して体を傷つけられない自由を制約しており、手術を受けるか、戸籍上の性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫っている」とし、「違憲・無効である」と判断した。 (5)の外観要件については、高等裁判所での審理のやり直しが命じられた。いわゆる差し戻しだ。
すでに(4)と(5)に該当する性別適合手術を終えている歩夢さんと未悠さんは、最高裁大法廷による判断をどう思ったのか。 「法律以前に、僕は胸がついていることが本当に嫌だったんです。体を元に戻すためには性別適合手術しか選択肢がなかった。当時の法律が手術なしで性別の変更が可能だったとしても、僕は絶対に手術していますね」(歩夢さん) 「私も、法律に準じたというよりは、どうやったら命を落とさずに生きられるかをずっと考えていた。性別適合手術は、私が死なずに生きられる唯一の方法だったんです」(未悠さん)
ただし、「病気やその他の理由で、望んでいない人にまで手術を強いてきたことが人権侵害だと認めた」点については、二人とも評価している。 「トランスジェンダーの中には、胸さえなくなればよくて生理は問題ないという人や、心は男だけど女装が趣味で胸や美貌をキープしたい人もいる。僕らみたいに全面的に手術したい人間ばかりじゃない。本当に多種多様なんです」(歩夢さん) とはいえ、(4)の生殖不能要件は、端的に言えば「子どもをつくれない体になる」ということだ。実際、未悠さんは手術後に付き合った男性に、自分が元男性だったと伝えたところ、「子どもがつくれない人とは将来を考えられない」と言われた。 「確かに傷ついたんですけど、もともと子どもが欲しいという願望がなかったというか、そもそも自分が射精して子をつくるという行為自体が気持ち悪くて……。だったら女として子どもを産みたかったくらいで」