なぜF1日本GPは中止になったのか…欧州での再開を前に抱えている問題とは?
日本の出入国制限の状況は、6月18日の時点で入国制限緩和の第一弾としてタイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国に対して、ようやく検討を始めたばかり。しかも、その数は1日に最大で250人程度で、さらにビジネス関係者などの入国に限ることで調整を進めているという状態。隣国の韓国や中国への制限を解除する前に、特例とはいえ、ヨーロッパからF1関係者を招き入れることは、政治的に難しい判断だった。 同様にアゼルバイジャンGPとシンガポールGPの中止も発表された。 これは、ヨーロッパで誕生しながらも、経済的発展を求めて、ヨーロッパ地域以外の国々での開催を続け、拡大路線を邁進し続けてきたF1がいま、方向転換を迫られていることを意味している。 まだ9戦目以降のスケジュールは発表されていない。しかし、すでに今年の開催中止が発表されているオーストラリアGP、オランダGP、モナコGP、フランスGPに加え、日本GP、アゼルバイジャンGP、シンガポールGPの合計7つのグランプリが中止となったことで、開幕前に全22戦を予定していた2020年のF1は、最大でも15戦しか開催できないこととなった。さらにヨーロッパから感染拡大の中心が移った南北アメリカ大陸での再開の目処が立っていないことを考えると、F1は今後も1カ国1開催という原則を捨て、可能な限りEU内でF1を開催しようと計画するだろう。 当初、今年のカレンダーから消滅していたホッケンハイムリンクでのドイツGP復活や、イタリア(ムジェロまたはイモラ)での2開催も十分考えられる。さらにヨーロッパ以外では、F1を国家的イベントとして開催したいロシアGP、中国GP、バーレーンGP、アブダビGPなど、いくつかのグランプリがダブルヘッダーも視野に入れてF1開催を誘致していると聞く。 しかし、最低でも15戦という数字を追いかけるがあまり、開催されるレースの中身が単調になっては本末転倒になるということも忘れてはならない。F1は世界最高峰のモータースポーツである。週末のテレビ番組のプログラムのひとつとして行われることは決してあってはならない。 せっかく、F1が再開されたのにファンがレースに関心を持たなくなってしまったら、そのときこそF1は新型コロナウイルス感染の影響よりも深刻な事態に直面することとなるのだから。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)